ホルモン補充療法で男性ホルモン値が上がらないのは、抗うつ薬を服用しているからかも/土井直人

【カット】その不調、男性更年期障害かも

その不調、男性更年期障害かも<12>

男性ホルモン「テストステロン」の低下によって起こる病気の「LOH症候群(男性更年期障害)」は、さまざまな「精神症状」「身体症状」がでます。それだけに、「うつ病」と診断されて治療を受けている人も少なくありません。そんな患者さんのケースを紹介します。

C男さん(47)は、大手企業の部長。海外出張や昇進試験などのプレッシャーから不眠・動悸(どうき)が始まり徐々にうつ症状が出てきたのです。それで、心療内科を受診したものの、うつ症状は良くならず、医師から勧められて休職。それでも状態に改善が見られず、C男さんは退職しました。心療内科では抗うつ薬を含めて4種類の薬を処方され、新たな仕事につきましたが、気力がわきません。それを見ていた奥さんが、いろいろ調べてLOH症候群にたどりつき、C男さんを私のところに受診させられたのです。

来院時のC男さんは、無表情で下ばかり向いて、会話も小さな声でしかできませんでした。そこで、まずは男性ホルモンの状態を知る血液検査。数値は6・9pg/mlとかなり低かったので、「男性ホルモン補充療法(テストステロン補充療法)」を始めました。すぐに効果は出ませんでしたが、5、6カ月くらいたつと笑い声も聞かれるようになり、表情も豊かに--。そして、奥さんと運動も始められました。それでも、テストステロン値は6・9のまま。正常値が7・5以上ですからまだ低い状態でした。ただ、症状は大きく改善しました。ホルモン補充療法を行っていても男性ホルモン値がアップしないのは、抗うつ薬をずっと服用しているからかもしれません。

私の外来受診後、C男さんはこれまでの心療内科から私どもの精神科に移られました。私どもの泌尿器科と精神科で連携しながら治療を続けています。精神科医は抗うつ薬を減らす方向で診察を進めています。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)