その不調、男性更年期障害かも<13>
「LOH症候群(男性更年期障害)」は、「うつ病」と診断されて治療を受けている人は少なくありません。前回は、そのケースとしてC男さん(47)を紹介しました。今回はもう1人、D男さん(50)のケースを紹介します。
D男さんは10数年前に上司からパワハラを受けて抑うつ状態になり、精神科を受診。そこで主治医からうつ病と診断され、抗うつ薬の服用が始まりました。症状は少し軽くなったことから、抗うつ薬の服用は10年近く続いていました。それで、メンタルが良くなったこともあり、ヘッドハンティングで外資系の会社に転職。ところが、外資系の会社は成績主義とあって上司のプレッシャーが強く、抗うつ薬を服用しているにもかかわらずうつ症状が悪くなったのです。「食欲低下」「考えがまとまらない」「他人とコミュニケーションがとれない」--。うつ病の治療をしているのに悪くなってきたのは何故なのか…。D男さんはそこに強く疑問を感じ、ネットでいろいろ調べ、「男性更年期障害もあるかなー」という思いにたどり着き、3年くらい前に私のところを受診されたのです。
身体の状態やこれまでの経過などを詳細に知るために十分に問診をし、男性ホルモンの状態を知る血液検査を行いました。数値は7・7pg/mlで正常値の7・5は超えていましたが、本人の体調が悪かったので「男性ホルモン補充療法(テストステロン補充療法)」を開始しました。それとほぼ同じ時期に、D男さんは精神科も私どもに転院されました。
私は生活指導として、「運動をしましょう」「ダラダラした生活をしないで、仕事と生活を分けましょう」などを徹底して勧めました。そして半年、「上司のプレッシャーからのうつ病」「食欲低下」「人とのコミュニケーション」などは改善しました。その時期に、チームを組んでいる精神科の医師が、D男さんの服用していた抗うつ薬を少し弱い抗うつ薬に替えました。そして、2年後には完全に抗うつ薬を切ることができました。うつ病は治り、今は定期的に男性ホルモン療法を受けるために受診されています。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)