テストステロン補充療法の副作用には睡眠時無呼吸症候群も/土井直人

【カット】その不調、男性更年期障害かも

その不調、男性更年期障害かも<21>

「LOH症候群(男性更年期障害)」治療の基本は男性ホルモンの「テストステロン補充療法」です。補充療法の副作用として、前回は「心血管障害」「多血症」「造精機能障害」を取りあげました。その他に注意すべき疾患に「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」があります。

睡眠中に呼吸が10秒以上止まる状態を無呼吸と言い、それが1時間に5回以上起こり、イビキ・夜間頻尿・日中の眠気・起床時の頭痛などの症状がある場合にSASと診断されます。SASの場合、高血圧、脳卒中、心筋梗塞発症のリスクが3~4倍高くなり、生命予後に悪影響を及ぼすことが研究で明らかになっています。

ところで、テストステロン補充療法はSASを悪化させる可能性があります。そのため、治療を開始する前に、患者さんの睡眠状況や無呼吸の有無を詳しく伺います。睡眠時無呼吸が疑われる場合は、携帯型装置による簡易検査や睡眠ポリグラフ(PSG)で睡眠中の呼吸状態を評価します。SASと診断され、PSGの結果で無呼吸や低呼吸が1時間当たり20回以上の場合は、「経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)」の導入を検討します。CPAPを行っている場合、テストステロン補充療法を行ってもほとんど問題は起こりません。

検査の結果、「まだCPAPを行う段階ではない」と診断される方もいます。そういう方にテストステロン補充療法を行うと、睡眠時無呼吸が増悪することがありますので、いびきや睡眠状態を外来受診時に伺い、状態が悪くなったときは再検査を行い、CPAPの導入、場合によってはホルモン補充療法の中止を検討します。

実は、SASの治療のみでテストステロン値が上昇する方もいます。テストステロンは睡眠が一番深い深夜から早朝に合成が促進され、午前中に高値で比較的安定します。そのため、CPAPで睡眠の質が改善されるとテストステロンの合成の改善につながるのです。

すでにCPAP治療中であってもテストステロン値の低い方については、慎重に評価した上でテストステロン補充療法を行ったほうが良いでしょう。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)