その不調、男性更年期障害かも<23>
男性のがんで最も罹患(りかん)者数の多いのが「前立腺がん」で、その特徴は、「男性ホルモン依存性のがん」。だから、患者さんが受診された時には、前立腺がんの腫瘍マーカー「PSA(前立腺特異抗原)」は必ずチェックします。今回は前立腺がんを体験されたE男さん(55歳)のケースを紹介しましょう。
E男さんは出版社勤務。身体にほてりを感じるようになり、特に夕方に増強する倦怠(けんたい)感が辛く、自分自身でいろいろ病気を調べました。そして、「LOH症候群(男性更年期障害)」にたどり着き、私のところを受診されました。問診では、E男さんは「電車内で、他の人の傘が自分に触れるだけで、抑えきれないほどイラつくようになっています」、と。私は泌尿器科と共に心療内科の受診も勧め、気分安定薬が開始されました。
当科では、男性ホルモンの数値の(1)「遊離(フリー)テストステロン」と前立腺がんの腫瘍マーカー(2)「PSA」を調べました。(1)は6・0pg/mlで基準値より低く、(2)は1・5ng/mlで問題ありませんでした。そこで、男性ホルモンの「テストステロン補充療法」を始めました。
治療を始めて3週間後も倦怠感はある状態だったので、テストステロン補充療法は継続することに。もちろん、年に2回、定期的にPSA検査はしていました。そのPSAの数値が当初1・5だったのが4年後に数値がポンと上昇し4・2に-。私はいったんホルモン療法を中止し、E男さんを前立腺がんの精密検査のため大学病院に紹介しました。結果は前立腺がん。ロボット手術での根治手術を受けました。E男さんからは「早期に発見していただき、本当にありがとうございました」と感謝の言葉をいただきました。
そして、その後もE男さんはテストステロン補充療法を希望されたのですが、前立腺がんではホルモン療法は禁忌なのです。そこで、漢方療法に切り替えて、私と心療内科の外来を併診で今も加療中です。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)