生活習慣で起きる歯のトラブル/照山裕子

健康連載 歯学博士照山裕子の口福のヒント

歯学博士・照山裕子「口福のヒント」<3>

厚生労働省のホームページによると、「生活習慣病」は平成8年頃から使われるようになった用語だそうです。以前は「成人病」と呼ばれ、加齢によって罹患(りかん)率が高くなる疾患の総称として国民に広く定着していました。

成人病の概念はすでに昭和30年代に登場していたので、食生活や運動習慣、喫煙といった生活習慣が病気の発症や進行に関わっている事実は実に長い間言い伝えられてきたことなのだとわかります。私は昭和生まれですが、小学生の家庭科実習で作ったメニューを今でも鮮明に記憶しています。食生活の重要性を理解させるための授業というのは大変貴重だったのだと再確認します。

人生において、食事と同程度の回数をこなしているのが歯みがきです。そのため、ここにも生活習慣が大きく影響するのですが、やはりまだまだ知られていないことが沢山あります。

「Tooth Wear」という現象もそのひとつです。虫歯や歯周病といった、細菌が関与するバイオフィルム(歯垢=しこう)によって起きるトラブルと異なり、Tooth Wearは細菌が関わらないのに歯が欠けたり溶けたりする点がポイントです。

特に気をつけたいのが磨耗(まもう)です。歯みがきの際のブラッシング圧が強く、一定の部位をすり減らしてしまうことを指します。汚れを取りたいがゆえに力が入ってしまう気持ちは非常に理解できるのですが、人間の手の力は相当なものです。汚れてもいないつるつるの歯面を力いっぱい擦り続けていたら、当然ダメージを受けます。

「歯全体がしみるので何とかしてほしい」という問い合わせは、冷たい飲食物をとる夏場と、普段使う水温が低下する冬場に急増する相談です。ほとんどの方が虫歯治療を想定して来院されるものの、実際に口の中を拝見して虫歯が原因であった確率は非常に低く、過度なブラッシングによって自ら起こしてしまっている摩耗が大半です。