歯学博士・照山裕子「口福のヒント」<4>
最近はYouTubeの企画に呼ばれることも増えました。テレビとは異なり、1度チェックした放送内容と近似した番組が自動的に上がってくる点が新鮮です。
先日何げなく見ていたものの中に、「肝臓にダメージを与える食事のとり方はどっちか」という特集がありました。果物を口にする際、皮をむいて果肉を食べる時とミキサーなどでジュースにして飲む場合はどちらが肝臓に負担かという話だったのですが、歯科医師の立場からも大変興味深いテーマでした。
口の健康を考える上で、食べ方や飲み方はとても重要です。歯の表面を構成する「エナメル質」は人体でもっとも硬い場所である一方、酸に弱いという特徴があります。このため、かんきつ系の果物などpH値が低い酸性食品をとる際は、歯が溶けない工夫をする必要があるのです。
果肉をそのまま食べる場合、必ず咀嚼(そしゃく)という動作が伴います。食道や胃の粘膜が傷つかないように食塊を小さくし、唾液を出して消化の手助けをするのですが、歯にとって大切なのがこの唾液の存在です。唾液が介在すれば酸っぱいものも薄まる、つまり酸性に傾いた口の中を中和する働きが期待できます。
ところが、ジュースやスムージーといった飲み物の場合、唾液が出る間もなく口中に広がるためエナメル質がダメージを受けやすくなるのです。体に良いと思って日々摂取していたのに、大事な歯を溶かしていたら本末転倒ではないでしょうか。
酸性飲食物の蓄積によって歯が溶ける現象を「酸蝕」といいます。酸蝕もTooth Wearの1つと考えられており、飲食後は水でゆすいで中和するといった一工夫で進行を防げます。ワインや炭酸飲料だけでなく、夏場のスポーツドリンクなども要注意です。特に子どもの場合は大人よりも歯が軟らかいので、表面がどんどん溶かされ、飲み物が原因で広範囲の虫歯につながるケースも少なくありません。