歯科医との相性/照山裕子

健康連載 歯学博士照山裕子の口福のヒント

歯学博士・照山裕子「口福のヒント」<19>

記事を読んで「先生に診て欲しい」というありがたい問い合わせをいただく機会があります。一方で「近所で通えるすご腕の歯科医を紹介して欲しい」という難題を要求する知人もいます。誠心誠意返事をしたにも関わらず「遠いからやめておく」などとあっさり断られることも珍しくありません。人の内面は実に奥深いと感じる瞬間です。こうした長年の経験から「その方にどんな歯科医が合っているかは十人十色」というファジーな答えにならざるを得ないというのが私の本音でもあります。

口腔(こうくう)という臓器は、体全体でみるととても小さな空間です。このため、大抵の歯科医はオールマイティーな治療ができると思われがちですが、決してそうではありません。例えば、顎が小さくて開きづらい女性の奥歯を治療するのに、グローブのような手をした先生が頑張ったとしても物理的な限界があります。特に根管治療(歯の神経に細菌感染が生じた際の治療)では顕著です。新人時代の研修先がオフィス街で、入れ歯の患者さんを1人も診たことがないまま開業してしまったという先生もいます。経験がなければ当然、難症例は厳しいわけです。

目にほこりが入って傷ついた際、整形外科クリニックに行くという方はほぼいないと思います。歯科の場合もこのように、実際には専門分野が細かく存在します。重症度が高ければ高いほど、専門医の技量が助けになります。このため、自分にはどの治療が必要なのかを、まずは患者さん自身が把握し理解する姿勢が大切です。

今もし歯科医院選びで迷われているという方は、まずは通いやすい距離にかかりつけ医を見つけることから始めましょう。歯の検診やクリーニング等の予防処置を受け、相性を判断する。治療が必要と言われたら難易度を尋ね、治療法を提示してもらってください。ふに落ちる答えなら、前進です。