歯学博士・照山裕子「口福のヒント」<27>
歯科医院を定期的に訪れる患者さんは、すでに予防意識が徹底しています。お付き合いが長くなるほど、家族のケアや治療法についても相談を受ける機会が増えます。なかでも最近特に目立つのが「ペットの口臭」にまつわる質問です。
私たち人間と違って、ペットは自分でケアをすることができません。人間のようにタバコを吸ったりニンニクまみれの焼き肉を食べたりすることもありません。それなのに口がにおってくるのはなぜかというと、そもそもの口の環境が影響しています。
人間は雑食なので、穀物や野菜などをすりつぶす歯と、肉をかみ切る歯のどちらも持っています。犬は肉食寄りのため、骨や肉をかみ砕く顎の強さがあります。臼歯(奥歯)も人間のように平らではなく、切り裂くために役立つ鋭い形態をしています。
人間は食物をよくかんで細かくし、唾液と混ぜて飲み込むのに対し、犬はほぼ咀嚼(そしゃく)せず、塊のまま飲み込みます。人間の唾液にはアミラーゼという消化酵素が含まれ、でんぷんを分解します。phは中性~弱酸性で虫歯や歯周病どちらにも罹患(りかん)します。対して犬の場合は唾液に消化酵素がなく、潤滑や抗菌作用が中心です。phが弱アルカリ性なので虫歯リスクはほぼありませんが、その代わり歯石があっという間に沈着します。汚れがすぐに固まってしまうのであれば、歯周病は避けられません。人間よりもはるかに若齢から歯周病を発症しており、3歳以上の犬の約8割が歯周病だそうです。小型犬はとくに顎が小さく、歯と歯の隙間が狭いこともあり、早期から重症化しやすいリスクを抱えています。
患者さんたちが気にするペットの口臭も、人間同様、歯周病由来のツーンとしたにおいです。か弱い存在であるペットだからこそ、毎日の歯磨きが健康を守ります。オーラルケアは文字通り、家族で取り組む時代だと考えてください。