歯学博士・照山裕子「口福のヒント」<34>
大人がイメージする「歯が痛い」とは、大抵が虫歯に起因するものです。ところが、小学校に上がるくらいまでの子どもが歯の痛みを訴える場合は、虫歯以外の原因であることが多いです。磨き残しによりプラーク(歯垢、しこう)がたまって歯肉炎が起きている、食片が歯と歯の隙間にはさまっている、頬や舌を誤ってかんでしまったなど、軟組織のトラブルによって痛みを生じているケースが頻繁にあります。
なかでも家庭でのケアで気を付けていただきたいポイントがひとつあります。それは「仕上げ磨きの強さ」です。大人の手の力は想像以上に強いため、汚れを落とそうと躍起になると、子どもの歯ぐきを傷つけることがあります。特に小学校卒業程度までのお子さんの場合は、乳歯と永久歯が生え替わる「混合歯列期」です。口の中をよく見ないでゴシゴシしてしまうと、歯ではなく、歯ぐきだけをひたすら摩擦している危険性もあるのです。子どももペットもそうですが、一度痛みを感じてしまうとそれがトラウマになってしまいます。口を開けることが恐怖になると、ちょっとやそっとでは触らせてくれなくなります。当然、歯科医院は拷問を受けそうな場所NO・1になり、私たちも悪者です。
クリニックの玄関で号泣しているお子さんの場合、普段から絶対に口を開かないと親御さんが嘆いているパターンが大半です。歯磨きの仕方を尋ねてみると、ご家庭でのケア方法が間違った方向に行っており、痛みと恐怖を与えるようなやり方が幼児期から繰り返されています。歯磨き嫌いになってしまうとリセットのタイミングが難しいかも知れませんが、今はアプリと連動してご褒美をもらえる電動歯ブラシなども普及しています。口腔(こうくう)ケアが楽しくなるような演出を心がけ、まずは指サックを使用したマッサージなどから始めてみるのも手です。