昔と今で変わった歯科の常識/照山裕子

健康連載 歯学博士照山裕子の口福のヒント

歯学博士・照山裕子「口福のヒント」<45>

大学生の頃「国立病院ダイエット」なる減量プログラムが話題になりました。口にしてよい食品が2週間分記載されているプリントが他大学から回ってきて、女子学生の間で大流行したのです。その前に流行った「リンゴダイエット」に比べたら、栄養素的にはまだまともではあるものの、不健康な痩せ方をしそうなメニューが満載でした。

当時はインターネットすら普及していない時代です。「冷えた焼き鳥」「グレープフルーツ」といった不思議な食材を、何の疑問も持たずに友人と分け合っていました。顔にひたすらキュウリの輪切りを貼る美容法も、昭和世代には懐かしい記憶ではないでしょうか。

当時から現代までに大きく変わったことは、物事が科学的根拠に基づいて語られるようになった点です。医療分野でもガイドラインが整備され、持続性や安全性を重視した生活習慣指導が主になっています。

歯科医療においても、歯みがき回数やタイミング、使用する歯みがき剤の選択基準などが昔とは異なります。かつては「1日1回でOK、とにかくゴシゴシ擦れば十分」とされていた歯みがきは、「1日2回以上、大人はゴシゴシNG」になっています。最も重きを置くのは夜で、歯間ブラシやフロスを使った上で通常の歯ブラシを用います。

歯みがき剤に関しては「使わなくてもOK、爽快感や口臭予防のためのもの」でしたが、今は「使ったほうが効率よく汚れを落とせる」ことがわかっています。フッ化物による初期虫歯抑制や、歯の再石灰化促進などの効果も世界的に定着しています。「歯を白く保つ」といった表記は、着色汚れを浮かせて落とすようなマイルドな効果しかありません。無駄に歯が削れるのでは、という心配は無用です。歯が汚れていれば虫歯の発見も遅れます。思い込みを取っ払い、知識をアップデートすることが健口の秘訣(ひけつ)です。