歯学博士・照山裕子「口福のヒント」<49>
「早食い」とはかむスピードが人より速いことではなく、食事全体の時間が短いことを指す言葉です。お昼時の外食では、頻繁に見かける現象でもあります。
早食いがなぜ体に悪いかというと、理由はとてもシンプルです。大半をかまずに飲み込んでいるため、唾液中の消化酵素(アミラーゼ等)が作用しません。ゴツゴツした大きな塊がそのまま胃腸に届くので、胃もたれや膨満感などの不調につながります。血糖値の乱高下が糖尿病やメタボリック症候群のリスクになることは広く知られていますが、当然早食いによって血糖値は急上昇します。早食いの人の2型糖尿病(生活習慣が関わる糖尿病)発症率は、そうでない人と比較して約2倍高いというデータもあります。糖尿病と歯周病には密接な関わりがあるので、歯科医院でも積極的に食生活や栄養指導を行う時代になりました。何十年にわたり、口腔(こうくう)から体への影響が続々と解明されてきたからなのです。
早食いによる過食や肥満リスクの懸念は、誰もが1度は耳にしたことがあると思います。脳の満腹中枢が刺激されるまでには約15~20分が必要なので、早食いを改善したい方はまずはこの時間を目安として食事をゆっくり取る意識を持つとよいかも知れません。「一口30回かむように」という指導もよく聞きますが、あまり現実的ではないと思っています。カウントに気を取られてしまい、食事を楽しんで味わうという一番の醍醐味(だいごみ)が失われてしまうからです。
一口量(1度に口に入れる食べ物の量)を減らすと、自然と咀嚼(そしゃく)回数が増えたという論文がありました。半分量にする、つまり一口量を2回に分けるイメージです。この方法であれば、小さめのスプーンを活用するといった工夫で難なくクリアできそうではないでしょうか。
一口量と食事時間、まずはここから改善です。