がんだけじゃない、誤嚥や感染症でも命に関わる~肺を守ろう!<9>
日本では肺炎で年間8万人以上の命が奪われている(厚労省2024年人口動態統計)。
発熱やせき、痰(たん)などの症状が急速に現れ、抗菌薬などで回復するケースは少なくないが、もともと基礎体力が低下した高齢者は命に危機が及ぶ。超高齢社会では、患者数も死亡者数も増えて肺炎が問題となっている。さらに近年、先進国を中心に世界的に増加している別の肺の感染症もある。
「海外でますます問題視されているのが、肺に感染しやすい非結核性抗酸菌(NTM)による感染症です。日本でも患者は右肩上がりで増えています。NTMの細菌にはたくさんの種類があり、結核を引き起こす結核菌やハンセン病のらい菌を除いた抗酸菌の総称をNTMといいます」と、公益財団法人結核予防会 複十字病院呼吸器センター治験管理室長、臨床医学研究科長の森本耕三医師は話す。
「NTMの種類は250以上で、土壌や生活環境の中に広く生息しています。日本のNTMによる肺感染症の原因菌は、アビウムとイントラセルラーレが約90%を占め両者をまとめて『肺MAC症』と呼ばれています。この他、カンサシやアブセッサスなども原因となります」(森本医師)
NTMは約300万年前から自然界に存在し、結核菌は約3・5万年前にNTMから誕生したという。結核の先祖のようなNTMは、抗結核薬が効かないほど強敵だ。
「結核は半年で標準治療は終了しますが、NTMに効果的な治療薬は乏しく、治療は1年以上と長期にわたり、重症化すると治療は困難を極めます。多くの方に肺NTM症を知っていただき早期発見から適切なマネジメントにつなげていただきたいと思います」と森本医師は話す。