不整脈IQを鍛えよう<13>
前回の心房性期外収縮に続いて、今回は心室性期外収縮についてです。心室は心臓から血液を送り出す部屋です。よどみなくするためには、前にもお話しした洞結節から発した電気信号が刺激伝導系を通って心室筋の隅々に伝わらなければなりません。心臓を会社に例えると、経営管理部門からの適切な指令が実務現場に降りてくると順調に機能するのと同じ仕組みです。
期外収縮は、英語ではプリマチュア・ビート(未成熟の拍動)と呼ばれます。まさにその通りで、心室のしっかりした電気興奮でないため、心臓から血液が出ていきません。心室性期外収縮の時に脈拍をとると脈が出ないので「脈が抜ける」「脈が飛ぶ」わけです。
北海道の広大な農業地帯、道東日本一の玉ネギ産地である農家の婦人(42)がある年の秋、循環器内科を訪れました。「農作業していたりすると一日中、胸が張った感じで苦しくて、血圧計で測ると血圧は大丈夫ですが脈をとると脈が遅いんです」と言います。
心電図検査すると1拍飛びで心室性期外収縮のオンパレードです。血圧計の心拍数は期外収縮を数えないので見かけ上徐脈とされます。ホルター心電図では24時間のうち、3万5000発も出ていました。1日の総心拍数は約10万発ですから1日の約3分の1は期外収縮で生きている計算です。カテーテルアブレーションで根治治療することとしました。
繁忙期が過ぎてからなら入院可能とのことで、11月から入院治療となりました。だが、なぜか心室性期外収縮が見つかりません。不整脈の誘発試験を繰り返しましたが同じです。正確な場所を見つけられないまま、「推定有罪」の発生場所をアブレーションで心筋焼灼(しょうしゃく)することになってしまいます。これには弱りました。疑問に答えるかのように、患者さんは静かに語りだしました。