不整脈IQを鍛えよう<16>
心室性期外収縮によって引き起こされる虚血性心臓病と不整脈を抑えるための薬(抗不整脈薬)について話します。心室性期外収縮が多発する心筋梗塞患者では突然死リスクが高いことが知られています。かつて患者に抗不整脈薬を使うと突然死リスクが下がるかどうか、欧米で大規模臨床研究がなされました。英語での頭文字をとってキャスト(CAST)研究と呼ばれます。
1989年にキャストの結果が公表された時、医学会に衝撃が走りました。薬を飲んでいた患者群の方が飲まなかった群に比べて寿命が短いことがわかり、この研究は1年で中止となったのです。「不整脈がみつかったらまず薬という」かつての抗不整脈薬信仰が一気に崩れた瞬間でした。
ここで使われた薬とは、心臓の電気の流れを遅くして不整脈を抑えると同時に心臓の収縮力も抑えてしまう薬でした。このタイプの薬は当時の主流でしたが、この研究結果を境に、心臓の電気の流れを落とさず収縮力を抑えにくい薬が主流になりました。
心筋梗塞のように臓器に起因する器質的心臓病がある場合、多くは心臓の収縮力が落ちます。この心臓収縮力が元の半分以上に落ち込んでしまうような、いわゆる低心機能状態となれば、心室性期外収縮によってさらに寿命を短くします。また、心室性期外収縮が、ポンと1回出るだけではなくポンポンとかポンポンポンと2連発、3連発と出現する場合や、心室性期外収縮が何種類もある場合、命に関わる心室頻拍や心室細動となる可能性が高くなります。積極的に治療を進めるべきです。器質的心臓病を併せ持つ場合には、脈の飛ぶ感じなどの自覚症状のあるなしではなく、心臓の収縮力や心不全の程度などの“心臓の傷み具合”を考慮して的確な治療を進めることが必須です。ぜひとも経験豊かで信頼できる専門医を訪れて欲しいと思います。