あなたにも起こる加齢性難聴<20>
「加齢性難聴」で「補聴器療法」が適応になると、補聴器に順応するための「補聴器のトレーニング」が重要なことは、前回紹介しました。そのトレーニング、実は最もつらいのは最初の1週間です。
難聴の方の脳は、静かな環境に慣れてしまっています。そこに、補聴器を使っていきなり大きな音を聞くと、脳は非常に不愉快に感じてしまいます。まずは、そこを克服するというのが第1段階になります。その時、「うるさいからこれ以上音を入れないで! 音を下げて!」と言って補聴器をやめてしまうと、いつまでたっても自分の聞こえの能力を会話部分にもっていくことはできません。
ここは、最初に脳が不愉快に感じた状態を何としても我慢し、越えていくのが重要なのです。根拠があるわけではありませんが、私たちは「まずは1週間頑張ってみましょう」と背を押します。それで、1週間、2週間と続けると、脳は徐々にその状況に慣れてきます。すると、余計な音は少しずつ無視できて、必要な言葉が聞こえる形になります。
スタートの1週間のトレーニングはそのように進みますが、実は補聴器にも手を加えています。最初は必要な音量の70%程度から始めます。そこになれると音の少しアップを繰り返し、最終的に100%にもっていきます。音を少しアップするたびに患者さんは「うるさい!」と思われますが、何とか頑張って補聴器を続けてもらいます。「何とか頑張って行こう」という気持ちがトレーニングで重要なのです。結果的に、トレーニングは3カ月くらいかけて慣れていくようにしているところが多いです。
やはり、いろんな人に励まされながら行っていくと、人は何とかやっていけます。だから、補聴器外来などで、医師や言語聴覚士などと一緒に、しっかりアドバイスを受けながら行うことが勧められます。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)