高度重度難聴の方は「人工内耳」で対応 補聴器と人工内耳の違いは/東大大学院・樫尾明憲准教授

あなたにも起こる加齢性難聴

あなたにも起こる加齢性難聴<23>

「加齢性難聴」が進行すると、まずは「補聴器療法」で対応します。それで改善が得られない高度重度難聴の方は、「人工内耳」の対応となります。では、補聴器と人工内耳の違いはどこにあるのでしょう。

補聴器はあくまで音を大きくするだけです。だから、大きくなった音を残っている内耳の機能で電気信号に変換して脳に伝えています。なので、内耳の障害が強くなってしまうと十分に電気信号を出すことができません。その情報も言葉として聞こえなくなってしまうのです。補聴器でいくら音を大きくしても、聞こえの能力が上がることはありません。

一方、人工内耳は直接電気信号を出すことができる機器。補聴器で聞こえなくなった内耳が機能していない人でも、人工内耳が内耳の代わりをするので、言葉が情報として伝わるようになっています。

ただし、人工内耳が出す電気信号にも限界はあります。電気信号を出すのは電極です。人工内耳の電極は多くても22個。本来、私たちの耳は電気を出す役割のあるのが有毛細胞です。有毛細胞は内耳のカタツムリのような形をした蝸牛(かぎゅう)という器官にある細胞。片耳に3000個くらいで、片側の人工内耳電極が22個なので、補聴器である程度聞こえる人は人工内耳で実現できる機能よりも、残った細胞で聞く方が効果的なこともあります。そういう人は人工内耳を行っても改善しません。「補聴器でもかなり聞こえが悪くなっているよ」と、ある一定の基準を超えている人が人工内耳を使うと、今より聞こえは良くなる、というものです。

人工内耳の手術をして効果があるか否かは、聴覚の評価を慎重に行って決める、という形になります。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)