肺がん早期発見で「身体に優しいロボット手術」/東京女子医大・神崎正人教授

健康連載・進化する治療を知ると肺がんも怖くない

進化する治療を知ると肺がんも怖くない<3>

肺がんは早期に発見すると「身体に優しいロボット手術」で、前回に紹介したA子さんのように、再発・転移なく術後5年を迎えることができます。今回は、肺がんの70代のB子さんのケースを紹介します。

B子さんは、人間ドックで「胸部異常陰影」を指摘され、胸部CTで右肺下葉に腫瘍があり、肺がんの疑いでした。タバコは吸わない方です。その時、ご主人が「東京女子医大病院は臨床研究中のロボット手術(現在は保険適用)をしている」ことをインターネットで知り、B子さんを連れて私どもを受診されました。2018年頃のことです。

PET検査などで右肺下葉の腫瘍はがんと分かり、ロボット手術で右肺下葉をすべて切除しました。術前の検査ではリンパ節への転移はなかったのですが、術後の病理検査でリンパ節に転移があり、リンパ節切除も行いました。結果、B子さんのがんは「腺がん」で、病期は3A期でした。そのため、抗がん剤での術後補助化学療法を行いました。18年頃は、術後に殺細胞性の抗がん剤を使うのは一般的でした。使った抗がん剤はカルボプラチンで、6カ月かけて6コース行いました。

その後、B子さんの状態は落ち着いていたのですが、3年後に縦郭リンパ節転移に加え、脳にも1カ所転移が確認されたのです。そこで、手術の時に取っていた検体の遺伝子検査をし、がん細胞に的をしぼって攻撃する分子標的治療薬が使えることが分かりました。そこで、分子標的治療薬のEGFR阻害剤の内服を始めたのです。そして、4年目には腹部のリンパ節への転移があり、定位放射線治療を行いました。今も、そこはPET検査で陽性なので、EGFR阻害剤を使っています。

B子さんは、術後すでに7年。ご主人と常に仲良く一緒に歩いて通院をされています。うれしい患者さんの1人です。長期に診ることができて良かったと思っていますし、B子さんのがんを消す分子標的治療薬の新薬が登場するのを心待ちにしています。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)