肺がん薬物療法の「分子標的薬」で生存1年→5年のケースも/東京女子医大・神崎正人教授

健康連載・進化する治療を知ると肺がんも怖くない

進化する治療を知ると肺がんも怖くない<23>

「肺がん」では主に4つの薬物療法が行われています。その中の1つ「分子標的薬」は、特定の遺伝子型のがん細胞に作用して、がんをたたきます。現在、薬物療法の中核となっています。となると、誰もが気になるのは、その有効性です。

この分子標的薬の治療で、最近は、私たちの患者さんの中に5年生存している方々もいらっしゃいます。では、5年生存なので完治か、となると難しいところです。CT検査をすると、「まだ、がんと思われる怪しいところはある」といった状態も見えます。

そのような「5年生存か?」と思われるの患者さんに対して、「分子標的薬はやめられるか」--。ここは非常に難しいところです。私たち臨床の立場から言わせてもらうと、「怖くて薬はやめられません」。これが本音です。分子標的薬でしっかりコントロールできているのに、「がんが見えなくなったので、薬は終了です」とはとても言えません。「本当に薬をやめていいのか…」というところが、正直あります。

私たちが判断に悩む完治しているような状態に至っている患者さんは、1人や2人ではありません。4期と診断され、以前の治療であれば1年程度しか生きられないと言われていましたが、分子標的薬の服用によって5年以上も生存されている患者さんも出てきています。もちろん、最初からずっと同じ分子標的薬を使っている人はまれで、遺伝子検査をして薬を替えながら治療を続けています。

その他に、分子標的薬を何回か替え、適応の分子標的薬がなくなった人には、抗がん剤にするケースもまれにあります。有効なだけに、私たちとしっかり話し合いながら適切な対応をしていきましょう。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)