11の健康障害を起こす“肥満・肥満症”対策<2>
「たかが肥満……」と思ってはいけません。肥満は多くの健康障害を引き起こしたり、悪化させたりしています。そこには肥満の先にある疾患の「肥満症」も見えてきます。
糖尿病や高血圧があって肥満症と診断されている方の中には、高血圧、糖尿病の治療は行って、ある程度状態は落ち着いていたのですが、肥満対策をおろそかにしていたことで腎機能が悪くなり、人工透析になったという人が近年増えてきています。
腎臓は高血圧、糖尿病は関係しますが、肥満も大きく関係します。肥満があることで病気の進行が速かったのです。腎不全、人工透析に進んでいくこともあるので、肥満を軽く見ないで、しっかり対応することが重要です。これは患者さんだけではなく、生活習慣病の治療をしている私たち医師もしっかり対応すべき点なのです。
これは、腎不全、人工透析だけではありません。がんをも引き起こします。それで、強く注意喚起したいのは「脂肪肝」の人です。
肥満症と診断される11の健康障害の中に「脂肪肝(代謝機能障害関連脂肪肝炎=MASH)」があります。お酒を飲まない人の脂肪肝なので、患者さんは医師から「脂肪肝ですね」と言われても安心されています。だから、「体重減少をしっかりやろう!」という気持ちは出てきません。検査でMASHを指摘した医師も、「この脂肪肝であれば問題ないので、また来年検査しましょう」と、少し前までは、この程度の対応でした。だから、脂肪肝だけで肝臓の医師を受診している人は少なかったのです。
ところが、最近は、MASHがあって肥満症の人は、検査で肝臓がんが指摘されるケースが少なくないのです。脂肪肝から直接肝臓がんになることも増えてきました。“たかが脂肪肝”と思ってはいけない時代。これをしっかり知っておかないと取り返しのつかないことになりかねません。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)
◆宮崎滋(みやざき・しげる)結核予防会総合健診推進センター所長、日本肥満症予防協会理事長。1971年(昭46)東京医科歯科大卒。東京逓信病院副院長、メタボリックシンドローム診断基準検討委員、肥満症診療ガイドライン作成委員長を歴任。肥満症の怖さ、予防の重要性を啓発。