脂質代謝や糖代謝をスムーズにする「アディポサイトカイン」/日本肥満症予防協会・宮崎滋理事長

健康連載「11の健康障害を起こす『肥満・肥満症』対策」

11の健康障害を起こす“肥満・肥満症”対策<6>

「肥満」は運動不足、食事の過剰摂取など生活習慣の乱れから内臓脂肪、皮下脂肪がたまって起こります。身体にたまる脂肪は、とりわけ内臓脂肪が多くの生活習慣病を招くのです。それは、内臓脂肪が分泌する生理活性物質の「アディポサイトカイン」が大きく関係していることがわかっています。アディポサイトカインは脂質代謝や糖代謝をスムーズにしています。

ところが、内臓脂肪がたまりすぎると、アディポサイトカインの分泌バランスが崩れてしまい、より糖尿病、高血圧、脂質異常症などを引き起こしやすくなるのです。

このアディポサイトカインの代表的なものとして有名なのが、善玉の「アディポネクチン」があります。アディポネクチンは血糖を下げて血管内を修復し、動脈硬化を防ぎます。しかし、内臓脂肪が増えるとアディポネクチンの分泌量が減ってしまう。すると、糖尿病や動脈硬化が進行し、高血圧、冠動脈疾患、脳梗塞(こうそく)などが発症してしまいます。

悪玉としては「アンジオテンシノーゲン」「TNF-α」「PAI-1」などがあります。アンジオテンシノーゲンは血圧を上昇させるので高血圧に。TNF-αはインスリンの働きを低下させるので、血糖値が上昇し糖尿病に。PAI-1は血栓を作りやすくするので動脈硬化が促進し、心筋梗塞、脳梗塞などに--。それは、内臓脂肪の中の脂肪細胞が脂肪を溜めて大きくなってくると善玉のアディポネクチンを出さなくなり、逆にTNF-αなどの悪玉物質がどんどん出てくるからです。結果、内臓脂肪の悪玉がもたらす健康障害はどんどん増え、11疾患が引き起こされてしまいます。

最近は、これらの疾患に加えて、「がん」「認知症」なども増えることがわかっています。肥満を決して軽く見てはいけません。まさに、肥満症は多くの病気、“万病の根源”なのです。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)