【国際医療福祉大学市川総合病院 寺嶋毅先生に聞く】
厚生労働省は8月末に、インフルエンザが流行入りしたことを発表した。季節外れのインフルエンザ(オフピークインフル)とも言えるほど、異例の広がりに、東京都は感染予防の徹底を呼びかけた。こんなに早い流行の背景には何があったのか。気象との関係は? そして季節が進む中での効果的な予防対策とは。感染症に負けない「免疫力」の整え方について、国際医療福祉大学市川総合病院(千葉県市川市)呼吸器内科の寺嶋毅先生(62)に話を聞いた。
【季節外れの感染流行…記録的大雨で体調不良者倍増】
インフルエンザが異例の早さで流行していることは、テレビのニュースなどで、ご存じだろう。寺嶋先生の周辺でも感染者が増えているという。
例年なら冬に流行するインフルエンザが、夏に感染拡大したのはなぜか。寺嶋先生は「明確な理由は難しいですが」と前置きし、日本の夏の「高温多湿化」など複数の要因を挙げる。
猛暑、酷暑による冷房の長時間使用による乾燥や換気不足。ゲリラ豪雨や台風の多発、列島に被害をもたらした記録的な大雨など、多湿からくる疲労の蓄積や免疫力の低下(※)…「多雨疲労」による体調不良を訴える患者が昨年の2倍という報告が都内クリニックから上がっている。
また、南半球など海外からのウイルスの流入も夏に流行した一因で、10月は訪日外客の増加(25年10月の訪日外国人客数は、同年9月比、約19%増)に伴い、感染症が国内へ持ち込まれるインバウンド感染の可能性も高まる。
【本格的な流行期へ…】
こうした状況の下、インフルエンザが従来の流行期を迎えることになる。夏から続く感染拡大が完全に収束しないまま、本格的な流行シーズンに入る可能性もあり、例年以上に早い段階から感染への備えが求められそうだ。寺嶋先生は「9月中は増加傾向をたどり、いったん落ち着いて、再び12月に向かって例年のように拡大するのでは…」と警鐘を鳴らす。
では、私たちはどうすべきか。寺嶋先生は「3段構え」を推奨する。土台になる1段目は、健康や免疫バランスを意識した日常生活。2段目が基本的な感染症対策。「呼吸器感染症に共通しているのは接触感染と飛沫(ひまつ)感染なので、うがいと手指消毒、マスク着用や換気を心がけてください」。3段目がワクチン接種になる。
寺嶋先生は3段構えの土台について「質のいい睡眠を7~8時間、バランスのいい食事、特に朝食はしっかり取ること、あとは適度な運動です」と具体例を挙げた。ちなみに寺嶋先生の朝食は、シリアル(コーンフレークやグラノーラなど)、牛乳、ヨーグルトが中心だそうだ。発酵食品や食物繊維は、腸内環境を整え免疫機能にも効果的だといわれる。とくにヨーグルトには乳酸菌とたんぱく質がバランスよく含まれ、免疫機能の活性化に役立つと考えられている。
また「『推し活』のような、熱中できるもの、集中できるものがあって、楽しい、うれしいと感じることが大事です」とストレスフルな現代人に提言する。
【長続きする習慣づけ】
最後に寺嶋先生からのメッセージを送ろう。「これだけやっておけば十分というものはありません。お話ししたことはどれも習慣的なものばかりです。自身の生活スタイルに合わせて長続きする『習慣づけ』が、免疫バランスを良くすることにつながるのです」。
(※)オランダの労働者を追跡した研究では、疲労度が高い人ほど、その後にインフルエンザや胃腸炎を申告する割合が高いという関連が示されている。
◆寺嶋毅(てらしま・たけし)国際医療福祉大学市川総合病院呼吸器内科部長、同大学医学部教授。1963年(昭38)生まれ。慶大医学部卒業、医学博士。呼吸器学会専門医だけでなく、がん薬物療法専門医、緩和ケア専門医、感染症専門医などの資格を持ち、多くの経験と新しい知見を踏まえた医療を提供している。