11の健康障害を起こす“肥満・肥満症”対策<22>
「肥満症」治療薬として世界中で使われ、日本でも2024年2月から保険適用になった「ウゴービ(一般名:セマグルチド)」。それ以前は、10年から糖尿病の治療薬として使われてきました。では、肥満症の治療薬ウゴービは、どのように使用されているのでしょうか。
ウゴービの使用には、まずは肥満症専門医のいる肥満外来を受診し、医師からしっかり説明を受けて使用の対象と判断される必要があります。対象となるのは、「高血圧」「2型糖尿病」「脂質異常症」のどれかに罹患(りかん)していて内服治療中の人。
さらに、<1>「BMI(体格指数)が35以上の高度肥満症」。<2>「BMI27以上の肥満症で、肥満症の11の健康障害が2つ以上ある」ことに加え、6カ月間に3回栄養指導を受け生活習慣改善の努力をしても減量効果のない場合、ウゴービが使えます。
ウゴービは自己注射(皮下注射)で行い、週に1回注射。薬の量は徐々に増やすように設定されています。薬は0・25ミリグラムから始まり、1カ月ごとに量を増やし、最大2・4ミリグラムまで増やすことができます。効果に個人差はありますが、通常1ミリグラムくらいから出ます。それによって体重が減少し、血糖、血圧、脂質も下がってきます。
薬の量が増えると効果が強くなるので、一時、食欲がグンと落ちます。加えて、消化管の動きが遅くなるので、吐き気、嘔吐(おうと)、膨満感などの副作用があります。ウゴービによる肥満症治療は最大で68週で、終了です。
私たち肥満症専門医は、68週間に患者さんの「食習慣」「運動習慣」を改善し、薬がなくても肥満症を改善できるように指導するのが建前です。しかし、現状は薬が終了すると、ほとんどの患者さんは痩せた体重の半分は戻ってしまいます。これは、調査でわかっています。
体重の半分が戻るならまだ良いのですが、完全に元に戻ると、何のために薬物治療をしたのかわかりません。薬物治療は、「これまでの生活習慣を変えようという難しい努力を少しでも軽くする」、という意味で捉えてもらうのが良いと思います。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)