歯学博士・照山裕子の「口から老ける人、若返る人」<6>
「口臭が気になる、胃が悪いのかもしれない」。昔から診療室でよく耳にする言葉です。しかしながら口臭の原因の多くは胃ではなく、口の中にあります。
2023年に発表されたレビューでは、口臭の原因を調べた複数の研究をもとに、歯周病や舌苔(ぜったい=舌の表面に付着する白っぽい汚れ)、歯みがき不足といった口腔(こうくう)内の要因が全体の8~9割を占めると報告されています。ただしこの数値は、口臭を訴えて歯科医院や口臭専門外来を受診した人を対象に、診察や口臭測定などで原因を追究した結果を示した割合です。一般の方全体にそのまま当てはまる数字ではなく、研究ごとに対象者や診断方法といった定義が異なる点も踏まえた上での目安と考えてください。
ただ、口臭を指摘された、あるいは自覚があるという方の大半が口の中のトラブルが原因だったという点は知っておいていただきたいポイントです。
においの正体として特に重要なのが、細菌が作り出す「揮発性硫黄化合物」です。代表的なのが硫化水素やメチルメルカプタン。歯と歯の隙間、歯周ポケットに汚れがたまると歯周病が進行し、より強烈なガスを発生させます。また、舌のひだの中は細菌が増えやすい場所です。
舌の役割として、食べ物をまとめ、こねくり回す働きがあります。このため知らず知らずのうちに案外汚れているのですが、舌ケアをしている方はとても少ないです。唾液(だえき)の減少も口臭に影響します。口の中を洗い流す液体が減ると汚れがたまりやすくなるだけでなく、ガスが揮発し、もわっとしたにおいを放出してしまうからです。
<1>隙間の掃除を徹底する(歯周病やむし歯の予防) <2>舌を観察する習慣をつける
<3>水分補給を意識する
が口臭対策の3原則です。歯ぐきからの出血や歯がぐらつくといった症状は歯周病進行のサイン。歯科医院へ足を運んでください。