戦国武将の上杉謙信から数えて17代目当主の上杉邦憲さん(78)が、羽生結弦に特別な思いを寄せた。謙信が主人公の69年NHK大河ドラマ「天と地と」を舞う羽生と上杉家の縁を強く感じ、4回転半の成功も含めて戦へ向かう男にメッセージを送った。上杉家に仕えてきた新潟・居多神社の第44代宮司で、謙信研究の第一人者でもある花ケ前盛明さん(84)も応援した。
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「天と地の 間に在りて 君は征く 氷の道を 窮めんとして」。達筆に思いを込めた。20年の全日本選手権。初披露の「天と地と」を演技する羽生に魅了された。上杉さんは「体がシビれるほどの感銘を受けたのは、いろいろなスポーツを見てきましたが、初めての体験。物事を突き詰める姿はまるで求道者のよう。謙信公とも通じている気がした」と興奮ぎみに話す。
戦国時代最強の呼び声が高い謙信。その第17代当主は「『軍神』とあがめられる人でしたが、勝つことを追求していたわけではありません。戦いには常に利他の考えがあり国を治める中で若いころから戦わざるを得ない状況でした」と羽生との共通点を見る。花ケ前さんも同調。謙信が羽生と同じ27歳の時に出家した後、戦いの場に戻った点を、コロナ禍から夢のため、応援者のため戻った羽生の姿と重ねた。上杉さんは謙信の出家に「自分の道を究めたかったのかもしれません」。
逆転を諦めない羽生にとって、目指す4回転半の成否が鍵を握る。世界選手権3連覇中の首位チェン(米国)とは18・82点差で「武田信玄と謙信公のライバル関係をほうふつとさせる、ハイレベルな戦いになるのでは」と上杉さん。フリーが真の勝負と言い「使い古された言葉ですが、勝ちは後からついてくるもの。4回転半を極めてきた羽生さんの道をリンクの上で表現してくれれば」と願った。
上杉家の参謀として頼られ、仕えてきた居多神社の宮司の44代目である花ケ前さんは「京では疫病も流行していた」と世相を重ねつつ「謙信公は生涯70戦のうち、わずか2戦しか敗れなかったと言われている。得意だったのは、人が想像もできないような戦い方。電撃作戦。羽生選手も一発勝負でぜひ結果を出してほしい」と期待した。くしくも羽生はSP8位からの逆転を期し、自己最高難度の構成でフリーに懸けるつもりだ。【平山連、木下淳】
◆上杉邦憲(うえすぎ・くにのり)1943年(昭18)4月18日、山形・米沢市生まれ。東大工学部航空科宇宙コースを卒業後、同大大学院で修士課程、工学博士号を取得。宇宙航空研究開発機構(JAXA)で日本の宇宙工学分野をけん引した。退官後も民間企業に勤めながら宇宙ビジネスの活性化をサポートし、北海道・大樹町を一大拠点にしようと奔走している。座右の銘は上杉家9代目当主、鷹山の「為せば成る為さねば成らぬ何事も成らぬは人の為さぬなりけり」。