<フィギュアスケート:北京オリンピック(五輪)>◇20日◇首都体育館◇エキシビション
世界の人を楽しませ、羽生自身が最後まで五輪を楽しんだ。
リンクに深々と一礼すると、中国の観客が日本語で「ありがとうございました!」とさけんだ。羽生結弦には充実感があった。
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「ショート(SP)、フリーともに全力を出し切った。4回転半を含めてやり切りました。全ての思い、全ての幸せを演技に込めて、自分のスケート人生のいろいろなものを込めて、表現できたんじゃないかな」
照明が落ちた会場に、上半身白の衣装が映えた。空気を優しくなでるように上げ、激しく下ろした両手と、ピアノの旋律が調和した。氷に映し出された桜が舞い、羽生が思いを込める「春よ、来い」を引き立てた。この日の朝のリハーサル。普段は4錠の痛み止めを1錠に減らしてみると、右足首に激痛が走った。それでも計6錠を体に流し込み、本番でこだわりのトリプルアクセル(3回転半)を華麗に跳んだ。最後まで1つの演技を大切に舞った。
「見ていただけるからこそ、僕の演技に何かしらの意味が生まれると思う。本当に皆さんに感謝したい」
五輪2連覇の重い肩書から目を背けなかった。痛めた右足をかばわず、フリーは世界で成功例のない4回転半に挑んだ。以降の練習では過去の演目を披露して「せっかく見ていただけるのであれば、その場でちゃんと僕が表現したかった」とコロナ禍で運営に尽力する現地スタッフを喜ばせた。「楽しさとアドレナリン」を原動力に駆け抜けた。
反動は大きい。3月の世界選手権は「(足首を)ちゃんと休ませてあげたい。総合的に判断したい」と出場を明言できない状態だ。傷が癒えた時、次はどんな場所で滑るのか-。羽生には大切にする思いがある。
「フィールドは問わないと自分の中では思っています。アイスショーなのか、競技なのか。それが報われるのか、報われないのか。僕にはちょっと分からない。どっちにしろ、皆さんに見ていただいた時に『羽生結弦のスケート好きだな』と思ってもらえる演技を、続けたいと思っています」
3度目の五輪で滑る理由を再確認した。【松本航】