<北京オリンピック(五輪):スピードスケート>◇女子1000メートル決勝◇17日◇国家スピードスケート館
高木美帆(27=日体大職)がついに個人種目で金メダルを獲得した。前回銅メダルの女子1000メートルで五輪記録を0秒37更新する、1分13秒19で優勝。500、1500メートル、団体追い抜きの銀に続く4個目のメダルは、18年平昌五輪の自身と98年長野五輪のジャンプで3個を獲得した船木和喜を上回り、1大会としては冬季五輪の日本最多。通算7個目のメダルも夏冬合わせた日本女子最多を更新した。
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高木美帆がダンスやサッカーを経て最終的にスケートに打ち込むようになったのは「奥深さを知ったから」。動力を用いない競技の中では最速といわれるスピードスケート。氷を押す足の角度、刃の摩擦、空気抵抗。物理学ともいえる難解な競技を解く楽しさを知った。
日体大の卒論にも探求者としての片りんがうかがえる。論文名は「スピードスケートと咳(せき)の関係についての一考察」。高木美は1500メートルや団体追い抜きを滑った後、長い間せき込んでいる。金メダルをとったこの日も、インタビューで何度も咳き込んだ。なぜその現象が起きるのか、自分を題材として研究した。
「スピードスケートは冷たくて乾燥している空気の中で、強度の高い運動を続けるため、せきに悩む選手が多い。ナショナルチームの選手では20人中11人の選手が苦しんでいる」と問題提起し、論文は始まる。
検証項目は以下の4つ。
(1)起床後の喉の痛み(10段階)
(2)起床直後から15分間でのせきの有無(4種類)
(3)呼吸中における一酸化窒素の濃度測定
(4)レース時の種目、室温、氷温、湿度、ラップタイムの落ち幅
16年1~3月に行われた4つの国際大会で実施。種目は1000、1500、3000メートル各4レースで検証した。
高木美自身がさまざまな角度から検証した「考察」「まとめ」は卒論抄録(写真)を参考にしてほしい。「勝つ」だけでなく「知る」ことで突き詰めようとする氷上の探求者。だからこそ5種目に出場して「スピードスケートとは」に迫ろうとした。【三須一紀】