女子レスリングが正式種目となった04年アテネ大会、その後引退、復帰をはさんで12年ロンドン大会、16リオ大会と3度オリンピック(五輪)を目指しましたが、いずれも代表になれませんでした。レスリング選手にとって五輪は最高の舞台なので行きたかったですね……。食事をする場所や宿泊するところも含めて、いろんなものを見たかったです。

でも、その過去があるから今がある。残念でしたけど、今は総合格闘技という自分なりの活躍の場所を見つけることができました。妹聖子、弟徳郁も同じく五輪を目指しましたが、その舞台には届きませんでした。私たちきょうだいは追いかけて届かなかったというより、自分たちが歩んでいる道が五輪とは少し違う道だったのかな、と思っています。

自身の過去の五輪挑戦と東京五輪について語った総合格闘家山本美憂
自身の過去の五輪挑戦と東京五輪について語った総合格闘家山本美憂

72年ミュンヘン五輪に出場した父郁栄の日体大時代の恩師が、64年東京五輪グレコローマンスタイル・フライ級金メダリストの花原勉さんでした。私にとっては身近な存在で、小さい頃からかわいがっていただきました。どれだけ偉大な人だったのかは、大人になって初めて分かりました。

子どもたちに五輪の夢を託すか、それは本人たちに任せます(笑い)。長男は既に総合格闘家になっていますし、次男アーノンは野球。長女ミーアも一緒にレスリングをしてはいますが、まだ遊びで体力づくりをしている段階です。あの子たちがやって楽しいと思うことをやってほしいと願っています。

今回の東京五輪で注目するのはやっぱりレスリングです。中でもグレコローマン65キロ級の乙黒拓斗選手の戦い方はすごく好きですね。自分が攻めやすい位置に相手を持っていくことができるし、ちょっとした瞬間に攻め込んだりする。見ていて面白い。女子の57キロ級川井梨紗子、62キロ級友香子姉妹は、お母さんの初江さんが私の先輩で、小さい頃から知っているので感慨深いです。

日本は4年に1度五輪が来る度にその注目度が大きくなっているように感じます。選手のみなさんは変に意識し過ぎず、それを勇気や力に変えてほしいですね。(294人目)