宮城MAXが埼玉ライオンズを71-35で退け、大会11連覇を達成した。クオーター(Q)スコアは23-8、14-6、20-8、14-13。立ち上がりからセーフティーリードを保ち、さらに突き放し、余裕を持って逃げ切るダブルスコアの圧勝。平成から守り続けてきた王座は令和になっても揺るがなかった。

黄金の紙吹雪が舞う中で選手は勝利の味をかみしめ、昨年から下賜された天皇杯も2年続けて抱いた。1回戦の伊丹スーパーフェニックス(兵庫)戦は11点差、準決勝のワールドBBC(愛知)戦は10点差で、いずれも終盤にリードを許す苦戦だった。それがまったく別のチームに生まれ変わった。

両チーム最多の31得点で2大会ぶり5回目のMVPに輝いた藤本怜央(35)が明かした。「ドリブルよりパスを多用するプランだった」。埼玉の特徴は機動力を生かしたプレスディフェンス。ドリブルでその網にかかることを避け、空中戦で切り崩した。速く、正確なパスワークで相手ゴール下にスペースをつくり、ダブルセンターの藤本、土子大輔(38)がインサイドからゴールを重ねた。2人へのマークが厚くなれば、女子日本代表の藤井郁美(36)が中間距離からリングに放り込む。さらに藤本が2本、土子が1本の3点シュートを沈めた。内から外から相手守備を攻略したことが、ターンオーバーからの逆襲、失点を防ぐことにもつながった。

「厳しい状況で勝てたのは、これまで勝ってきた意地でしょうか」と藤井郁はプライドを強調した。日本代表の主将で司令塔の豊島英(30)に体調が十分ではなく、スタメン5人の最年少が藤本で40歳代が2人という布陣。現在の日本の主流、攻守の切り替えを速くするトランジション・バスケットに対応できるかが今大会のテーマだった。主力に若手起用し、走力で勝負を挑んでくるライバルに苦しみながら、3戦目の決勝で完璧な試合運びを実現した。「走り負けるかもしれない。でも、しっかり自陣に戻って守り、チェアワークも基本に立ち返った」と土子は振り返った。

今大会から健常者の出場が認められ、8チーム中5チームに8人の選手が登録された。埼玉にも3人。競技力向上と普及のためだが、宮城MAXは“補強”をしなかった。「可能性は広がったと思う。でも、僕は障がい者スポーツでは障がい者が最強でなければいけないと思っている。時代が変わっても自分たちの時代は変えたくなかった」と藤本は胸を張った。令和最初の天皇杯は、絶対王者がしたたかさを見せつける大会になった。【小堀泰男】