世界ランキング2位の日本がニューパワーの活躍で開幕戦を飾った。同10位で初対戦のブラジルに61-42(17-11、16-11、15-9、13-11)で快勝。代表最年少、17歳の橋本勝也(東北ストーマーズ)がチーム最多の18得点をたたき出した。世界10位以内の8チームが集結した東京パラリンピック前哨戦。日本の将来を担うハイポインター(障がいの軽い選手)のプレーに、会場には「ハシモトコール」が巻き起こった。

速く、強い。長いリーチと高い運動能力。先輩たちがつくってくれたスペースにトップスピードで走り込む。バランスよくパスをキャッチしてブラジルのトライラインを突破する。守りを固められれば、車いすを強引にねじ込むように前進した。第1ピリオド(P)4分すぎにコートに入るといきなりトライを決め、第4Pまですべて途中出場で18点を積み上げた。

「コールですか? 聞こえました。すごくうれしかったです」。色白のあどけない顔に笑みが広がる。昨年4月に代表に初招集され、同8月の世界選手権(オーストラリア)の優勝メンバーでもある。ただ、海外遠征中心の代表戦で、これまで出場機会は限られていた。今大会が国内の国際試合デビュー戦。若手に実戦経験を与えるケビン・オアー監督(51=米国)の方針の下、格下のブラジル相手にチャンスが与えられた。

先天的に四肢に欠損があり、スポーツとも縁がなかった。しかし、中学2年の時に車いすラグビーに出合い、その激しさに夢中になった。障がいが一番軽い持ち点3・5でプレーしてきたが、準優勝した先月のアジア・オセアニア選手権(韓国)のチェックで3・0に変更された。出場する4選手のポイント合計が8以下と規定されているだけに、チームにとっても大きなアドバンテージになる。

「攻撃でも守備でも(相手にいい形をつくられると)最後に諦めてしまうところがありました。そこはケビンにも言われました。『最後まで走れ!』と」。そう言って橋本は表情を引き締めた。東京パラの代表入りへ、そして目標とする「日本のエース、世界一のプレーヤー」へ進化を続けていく。  【小堀泰男】

◆橋本勝也(はしもと・かつや)2002年(平14)5月9日、福島県三春町生まれ。先天性の四肢欠損で、幼いころから車いす生活を送る。三春中2年の時に競技に出合い、17年に発足した東北ストーマーズに加入してプレーを始めた。現在、福島県立田村高2年生。

◆車いすラグビー・ワールドチャレンジ 8チームが2組に分かれて1次リーグを戦い、各組上位2チームが19日の準決勝に進み、20日に決勝、3位決定戦が行われる。1次リーグの組分けは以下の通り。

【A組】日本<2>、英国<4>、フランス<6>、ブラジル<10>

【B組】オーストラリア<1>、米国<3>、カナダ<5>、ニュージーランド<9>

※<>内は世界ランキング

◆車いすラグビー◆

▼4対4 四肢に障がいのある選手が4対4で戦う。ラグビー、バスケット、バレー、アイスホッケーなどの要素が組み合わされ、バスケットと同じサイズのコートで行う。

▼クラス分け 選手は障害の程度でクラス分けされ、持ち点がつけられる。重い方の0・5点から軽い方の3・5点まで0・5点刻みに7段階で、4人の持ち点合計が8点以下でなければならない。3・0以上の選手をハイポインター、1・5以下の選手をローポインター、中間の選手をミドルポインターと呼ぶ。

▼試合時間 1ピリオド(P)8分の4P制。第1、3P終了後は2分、第2P終了後は5分のインターバルがある。

▼前方へのパスOK バレーボールと同じ大きさの専用球を使い、パスや選手が保持して相手側のトライラインまで運ばれる。前方へのパスも可能。ボールを保持した選手は10秒に1回ドリブルするか、パスしなければならない。トライが決まれば1点。