パラ陸上の男子車いすT52クラスで400、1500メートルの世界記録を持ち、東京パラリンピックでの金メダル獲得が期待される佐藤友祈(31)が22日、オンラインでプロ転向報告会見を行った。

佐藤はこれまで岡山市に本社を置く人材派遣関連会社のグロップサンセリテに勤務し、同社の車いす陸上チーム、WORLD-ACに所属して業務と競技を両立してきたが、1月に退社。2月1日にフォント制作会社のモリサワと所属契約を結び、プロ生活をスタートさせている。

「コロナ禍で暗いニュースばかりを目にするようになった。夢や目標を諦めなければならないケースも多いと思う。そんな中でプロに転向して、多くの人々に夢や感動をメッセージとして伝えていきたい」。佐藤はコロナ禍の中、東京大会開幕まで半年に迫るタイミングでの決断をこう説明した。

すでにプライベートチーム「prier ONE(プリエ・ワン)」を立ち上げ、今後はコーチやトレーナーを含めた4~5人の体制で活動していく。チームの命名はタレントの香取慎吾(44)に依頼。両親の「友のために祈れる人に」という願いがこめられた自分の名前からフランス語の「prier(祈り)」と、名曲「世界に一つだけの花」の歌詞「only one」の「ONE」を合体させて名付けられた。「パラスポーツの認知度を向上させたい。そのために佐藤友祈という人間にも興味を持ってほしい」とSNSでの情報発信にも力を入れ始めた。

初出場の16年リオ大会では400、1500メートルとも悔しい銀メダル。その後、17、19年の世界選手権で2大会連続2冠に輝き、東京大会代表にも内定している。この2種目に加えてパラ種目外の800、5000メートルの世界記録も保持する最強スリートは断言した。「東京パラリンピックが開催された時にベストパフォーマンスを発揮できなければカッコ悪い。世界新記録で2つの金メダルを獲得します。プロとして夢に向かってチャレンジし続けることで、子どもたちが夢を持てるようにしたい」。岡山に拠点を置き続けながら東京都内の味の素ナショナルトレーニングセンターで個人合宿を積み重ね、8月に備える。 【小堀泰男】

◆佐藤友祈(さとう・ともき)1989年(平元)9月8日、静岡県藤枝市生まれ。静清工高(現静清高)卒業。県内の水産加工会社に勤務後、演劇の仕事を希望して上京したが、21歳の時に骨髄炎にかかって左腕と下半身にまひが残った。2012年のロンドン・パラリンピックを見て車いす陸上を開始。16年リオ大会は400、1500メートルとも銀メダル。世界選手権では15年に400金、1500銅。17、19年に2大会連続2冠。