鈴木朋樹、リオ・パラ逃した悔しさバネに優勝

車いすT54 800メートル決勝 力強い走りで逃げ切り優勝する鈴木(右)(撮影・狩俣裕三)

<日本パラ陸上選手権>◇第1日◇10日◇東京・駒沢陸上競技場◇男子800メートル(車いすT54)ほか

 リオデジャネイロ・パラリンピック代表を逃した若い力が台頭した。男子800メートル(車いすT54)決勝を鈴木朋樹(22=トヨタ自動車)が1分37秒17で制した。スタート直後から先頭に立ってレースを支配する快勝だった。リオ落選の悔しさを晴らす世界選手権(7月14日開幕、ロンドン)での表彰台に自信を深めた。

 22歳とは思えないレース運びだった。強風が向きを変えながら吹き抜けるコンディション。鈴木はスタート直後に先頭に立った。後続をけん制しながら落ち着いて車いすを進め、第3、4コーナーでの競り合いにも冷静に対応。温存していたスプリント力を最後に爆発させて逃げ切った。

 「ゴール前は向かい風が強くて…。タイムは良くなかったですね。まだ、疲れが取れていないこともあるかもしれません」。3日前にスイス遠征から戻ったばかり。パリとの間を往復して3レースをこなしてきた。コンディションは決して万全ではなかったが、狙い通りの勝利にやわらかい笑顔を見せた。

 800、1500メートルでリオ代表を目指したが惜しくも落選した。鈴木は今年を「悔しさを晴らす1年」と位置づけている。課題は体力、スプリント力不足。世界舞台で戦うために短距離陣用のインターバル練習に力を入れている。それと同時に以前から出場してきたマラソンの経験が、若さに似合わぬ駆け引きに表れてきた。15年の東京マラソンに初出場で2位。その後、世界メジャースに昇格した同大会で、今年2月には3位に食い込んでいる。

 今春に城西国際大を卒業し、トヨタ自動車に入社した。業務と練習を両立させる毎日だが「仕事でもいろいろな経験を積みたい。競技に集中できる環境も用意していただいてます」と前向きだ。世界選手権まで1カ月あまり。「出るからには当然、上位、メダルを狙います」。夏のロンドンで、鈴木が世界にその名をとどろかせるかもしれない。【小堀泰男】

 ◆鈴木朋樹(すずき・ともき)1994年(平6)6月14日、千葉県生まれ。生後8カ月で交通事故に遭い、脊髄を損傷して両脚が不自由に。小学5年のときに障がい者スポーツ施設で車いすランナーを見たのが競技を始めたきっかけ。アテネ、ロンドン・パラリンピック代表の花岡伸和氏の指導を受けて力をつけてきた。世界選手権は15年に続いて今年が2度目の出場。