パラ成田緑夢が走り高跳び日本新 普通の助走で結果

男子走り高跳び(下肢障がいT44)決勝 成田緑夢は自らの記録を更新する1メートル86のに日本新をマークした(撮影・小堀泰男)

<パラ陸上:ジャパンパラ競技大会>◇第1日◇岐阜市・長良川競技場

18年平昌パラリンピックのスノーボードで金、銅メダルを獲得した成田緑夢(25=フリー)が、男子走り高跳び(下肢障がいT44)で1メートル86の日本新をマークした。同種目で20年東京パラリンピック出場を目指す成田は今季3度目の日本新で、5月の北京GPで跳んだ記録を2センチ上回った。

またまた“グリム・ワールド”が展開された。成田の助走が普通に戻った。6月の日本選手権(大阪)ではバーに対して真横、左側からの助走で驚かせたが、この日は真っ正面から。1メートル65からスタートし、1メートル80を3回目に成功するとスイッチが入った。1メートル83を一発。そして、1メートル86の新記録を2回目でクリアして両拳でガッツポーズをつくった。さらにバーを1メートル89に上げたが、最初に失敗するとあっさりリタイアしてしまった。

「今はあの助走が好きですね。(1メートル89には)高さ負けしていました。今の僕には跳べないと分かったのでやめました」と成田は屈託のない笑顔で言った。昨年秋に東京パラを目指すことを表明以降、コーチなしで試行錯誤しながらジャンプをつくってきた。空中姿勢は完成に近づき、助走にも手応えを得つつある。現在、力を注いでいるのは踏み切りで「踏み切ってからのテークオフを速くしています。練習でもよかったので、86が跳べれば、と思っていたんです」。

2月のドバイGPで1メートル81、北京で84、そして今回が86。同クラスの世界記録は2メートル19で、東京パラでは義足T64クラスとの統合種目として実施される見込みだ。この日、T64の鈴木徹(39=SMBC日興証券)は1メートル95をマークしている。「まだまだ10センチも差がある。(徹さんの)背中が見えたなんて言えないですよ」。競技人口の少なさから、東京パラの出場権がかかる11月の世界選手権(ドバイ)への派遣指定記録は設定されていない。「世界選手権への目標は、今は掲げていません。準備を続けるうちに見えてくるかな」。個性的に明るく、真っすぐに、成田は競技と向き合っている。【小堀泰男】