東京パラ1年前 谷真海と稲垣&草なぎ&香取対談

いよいよ東京パラリンピックまであと1年。これから盛り上がっていけるよう、ざっくばらんに語り合った、左から香取慎吾、谷真海、草なぎ剛、稲垣吾郎(撮影・狩俣裕三)

2020年東京パラリンピックは今日25日で開幕まで1年となった。大会の成功へ向け、招致活動で“パラの顔”として尽力し、パラトライアスロンで出場を目指している谷真海(37=サントリー)と、国際パラリンピック委員会の特別親善大使で、日本財団パラリンピックサポートセンターのスペシャルサポーターを務める稲垣吾郎(45)草なぎ剛(45)香取慎吾(42)のスペシャル対談が実現。パラスポーツの力、魅力、楽しみ方、そして未来について語り合った。【取材 上岡豊、荻島弘一】

  ◇   ◇   ◇  

谷は13年9月の国際オリンピック委員会総会(ブエノスアイレス)の最終プレゼンテーションでのスピーチで、「スポーツの力」を訴えて東京招致決定に貢献し、今も現役として東京大会出場を目指している。一方、稲垣、草なぎ、香取の3人は17年11月からスペシャルサポーターとして、パラスポーツを応援する活動を続けている。ともに“パラの顔”だが、意外にも今回が初対面だった。

谷 初めまして! パラリンピックを応援してくださっていることを知っていたので、いつかお会いできるのかなと思っていましたのでうれしいです。

香取 本当にやっとお会いできましたよね。よろしくお願いします。

アスリートと応援団。立場は異なるが、目指す先は同じ20年東京大会。いよいよ開幕まで1年に迫った。

谷 (15年の)長男出産後、世界を目指せるところまで戻ってこられて幸せを感じています。トライアスロンは1年かけて選考するので、もう始まっているんです。

香取 そうなんですね。僕らは「さらに自分たちができることをしないと」という思いですね。

稲垣 1年後、楽しみしかないですね。ここからの時間を大切にしていかないと。

草なぎ 僕はできる限りアスリートの気持ちになろうかなって。1日1日が勝負だと思うので、日々精進していかないと。

サポーター就任以来、稲垣らはさまざまなイベントに参加し、実際に競技を体験するなど、この2年間で、パラスポーツ、パラアスリートの魅力を肌で感じてきた。

草なぎ ハンディを皆さん抱えているのですけど、それをものともせず、努力したり、気持ちが負けてなかったり、ハンディをハンディとしていないようなところに、いつも僕は勉強させられますね。

稲垣 そもそもパラスポーツとして見ていなくて、選手もアスリートとして見ている感覚です。知らない競技が多くて、全てが新鮮です。同じサッカーやバスケでもルールが異なり、全然、違うものですよね。苦労や人に言えない努力も伝わってくるんですけど、僕はあっけらかんとスポーツとして楽しんでます。

香取 皆さん、すごく輝いていますよね。障がいは生まれつきや、交通事故など、人それぞれですが、パラスポーツに出会って、目の前が開けて、その先にある光をつかもうとしている人たちの輝きの強さに魅力を感じます。

谷 すごくうれしいです。私も20歳の時に(右足が)義足になって、人生の光が見えなくなって「何のために生きていくのだろう」と思いました。でもパラリンピックを知って、パラリンピックの舞台に立ってみると、世界中から集まる選手たちの輝きに圧倒されて、自分が義足になったことなんて本当にちっぽけなことだと思えるようになりました。「新しい人生の光を見つけて、それをつかむために力を出し切っていきたい」と。スポーツは1人1人の挑戦です。稲垣さんがおっしゃったように、障がい者スポーツという言葉は必要ない、と思っています。

今月22日からチケットの抽選受け付けもスタートした。組織委員会では全会場を、満員の観客で埋めることを目標に掲げている。

谷 6年前「日本にパラリンピックが来るんだ」と喜びもあったのですけど、12年ロンドン大会の超満員のスタジアムを見ていたので、東京でも満員にできるのかと危機感も感じていました。でも、皆さんが応援してくれるようになって、パラ駅伝で「こんなに人が入るなんて」って思うくらい多くの人が来てくれて。大きな変化を感じていて、すごくありがたいです。オリンピック(五輪)は世界中から観客が集いますが、パラは国内の盛り上がりが大事なので、(3人の)力を貸していただきたいです。

香取 東京で開催されるから盛り上げたいというのはもちろんですけど、ストレートに開会式が超満員になるパラリンピックにしたいと、ずっと思っています。だから僕のSNSを全て駆使してPRしたいです。単純だけど、効果はありそうですからね。

谷 気軽にビールを飲みながら笑顔で観戦する、くらいの気持ちで足を運んでもらいたいです。そこでパラスポーツならではの楽しさに気付いてもらえると良いなって。

香取 面白いですよね。面白いと思っちゃいけないという感じがあるけど、スポーツとして面白がって良いんですよね。「勝負は勝負」ということを応援する側も分かって見るともっと楽しめると思う。

谷 そうですね。ルールが分からなくても、想像を膨らませて見ると「ワォ!」の連続で。それに応援してくださる人から選手たちはパワーをもらえるんです。満員になれば、世界中から集まる方々にも、五輪だけじゃないパラリンピックの成功で「成熟した国だな」と感じていただけると思います。

草なぎ たくさんの選手と会ってきたけど、生でみる迫力だとかすごくて。やっぱりテレビの画面と、自分の目で実際に見るのとは違いますよね。見ると必ず、何かをもらえるというか。

稲垣 スポーツでしか味わえない感動とかがあるじゃないですか。それに影響を受けるし、みんなもそうだと思う。それがスポーツの力というもので、あの感動は生じゃないと味わえないですからね。

香取 日本全体で盛り上がりを見せれば、テーマになっている復興が必要な場所にも笑顔があふれると思う。そして、復興だけじゃなく、その先の扉を開く大きなきっかけになるんじゃないかな。

谷 みなさん、すごいです。本当にそうなると良いですね。ロンドンではパラリンピック開催をきっかけに、障がい者の雇用率が上がるなど変化も起こっています。

香取 障がいのある方との向き合い方とか、パラスポーツを知るきっかけになったり。目に見えるところじゃなくて心を変えることが大切ですね。そのためには、もっと盛り上げないといけないですね。もう1年じゃなくて、まだ1年。皆さんにもっともっと知っていただきたいです!

<稲垣、草なぎ、香取のパラリンピック>

▼15年 香取が日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)に約16平方メートルの巨大壁画を寄贈。18年にはレゴブロックで作品を再現、一般公開された。

▼17年11月 パラサポのスペシャルサポーターに就任

▼18年3月 東京・駒沢オリンピック公園陸上競技場で開催された「パラ駅伝 in TOKYO 

2018」に登場。売上全額をパラスポーツ支援にあてるチャリティーソング「雨あがりのステップ」を初披露。

▼同年7月 都内でチャリティーソング寄付贈呈式出席。2300万6214円を寄付。国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長から「国際パラリンピック委員会特別親善大使」のオファーを受け、快諾。

▼同年9月 新潟市で開催されたパラスポーツ体験イベントに参加。トークショーの他、車いすバスケやパラパワーリフティング、ボッチャなどに挑戦。

▼同年11月 都内で開催されたパラスポーツと音楽のイベント「ParaFes 2018」に参加。

▼19年3月 「パラ駅伝 in TOKYO 2019」に参加。草なぎが走者として出場。

◆谷真海(たに・まみ)1982年(昭57)3月12日、宮城県生まれ。仙台育英高から早大に進みチアリーダーとして活躍。在学中の2001年に骨肉腫が発症し、02年に右足膝下からを切断。中学から親しんだ陸上競技で04年アテネから3大会連続パラリンピック出場。13年、東京大会招致委員会のプレゼンターとしてIOC総会でスピーチ。14年に結婚、現在は1児の母。

◆稲垣吾郎(いながき・ごろう)1973年(昭48)12月8日、東京都生まれ。89年NHK朝の連続テレビ小説「青春家族」に出演し注目される。90年「さらば愛しのやくざ」で映画初出演。ドラマは92年フジテレビ系「二十歳の約束」、04年にスタートした「稲垣吾郎の金田一耕助シリーズ」などで主演。30日から主演舞台「君の輝く夜に~FREE TIME,SHOW TIME~」に出演する。血液型O。

◆草なぎ剛(くさなぎ・つよし)1974年(昭49)7月9日、愛媛県生まれ。フジテレビ系ドラマ「僕と彼女と彼女の生きる道」、「海峡を渡るバイオリン」の卓越した演技が評価され、05年の橋田寿賀子賞を受賞した。韓国語が得意で「チョナン・カン」の名前で同国の番組にも出演。9月6日から主演映画「台風家族」が公開される。血液型A。

◆香取慎吾(かとり・しんご)1977年(昭52)1月31日、神奈川県生まれ。88年に11歳でSMAPメンバーに。04年NHK大河ドラマ「新選組!」で主演。06年フジテレビ系「西遊記」など多くの主演作がヒット。09年にはニューヨークのオフ・ブロードウェーでミュージカル「TALK LIKE SINGING」に出演。今年3月には国内での初作品展も開催した。血液型A。

※■は弓ヘンに前の旧字体その下に刀