東京パラリンピック開幕まで24日でちょうど1年。車いすテニスのクアード(上下肢障がい・男女混合)世界ランキング5位の菅野(すげの)浩二(リクルート)は、39歳の誕生日を迎えた。新型コロナウイルスの影響で大会が延期され、日程が1日繰り上がったことで、来年の開会式当日に40歳になる。ラケットを握って20年の区切りの年でもある。男子(下肢障がい)国枝慎吾、女子(同)上地結衣に続く日本のエースは、この1年をプラスに変えてメダル獲得に挑む。
菅野は淡々と、気負うことなく1年後に思いを巡らせた。「やった、誕生日だーッ、という気持ちはありません。でも、自分の誕生日プレゼントにメダルをもらおうとは思っています」。開幕日に40歳。そして車いすテニスを始めて20年。区切りの年に東京大会を迎える。
現在の世界ランキングは5位。レフトハンドからのパワーショットと広いコートカバリングがストロングポイントだ。昨年3月には自己ベストの3位まで浮上し、世界で4人しか出場できない全仏、ウィンブルドンのグランドスラムも経験した。
高1の夏休み、15歳の時だった。友人のバイクの後部座席に乗って乗用車と衝突。頸椎(けいつい)を損傷し、首から下に障がいが残った。20歳で知人から競技用車いすを譲り受けてテニスを始めたが、あくまで趣味。障がいが軽い男子で日本ランキング8位以内が出場できる全日本選抜マスターズ出場を目指していた。
16年の年末、35歳で目標をかなえた。その会場で、男子でリオまで6大会連続パラ出場の斎田悟司(48)からクアード転向を勧められた。「英語がしゃべれないから海外の大会に出るつもりも、パラの代表になるつもりもなかった。ただ、15年間男子でやってきた自信と、東京大会の開催が大きかった」。17年からクアードで世界と戦い始め、あっという間にトップ戦線に駆け上がった。
課題はバックハンドとサーブ。特にバック強化のために4月から男子元日本代表の岩田守さん(42)をコーチに迎えた。昨年までは健常者相手の練習が多かったが「車いすの岩田さんと打ち合い、試合で使えるバックの感覚を身につける」ことが狙いになる。
コロナ禍で自粛期間中も営業している民間コートを探して岩田コーチとできる限りボールを打った。自宅では素振り用マシンで打球感覚を維持し、筋力や体幹の強化を図った。現在は都内の拠点、味の素ナショナルトレーニングセンターで練習ができている。9月再開されるツアーに復帰するべく調整に余念がない。
「東京までにランクを4位以内に上げてシードを確保したい」。クアードのシングルスは16人出場で、シードなら準決勝まで強豪とは当たらない。菅野の頭の中にはメダルへのゲームプランが明確に描かれている。【小堀泰男】
◆菅野浩二(すげの・こうじ)1981年(昭56)8月24日、埼玉県上尾市生まれ。小中学生時代はサッカーのFW、GKとしてプレー。県立騎西高(08年閉校)ではバスケットボール部に入部した。16歳の誕生日目前の受傷で50キロ以上あった握力が3キロまで落ちたが、現在は約20キロまで回復。昨年までの3年間で国際テニス連盟ツアー通算17勝、4大大会に次ぐカテゴリーのスーパーシリーズで2勝を挙げた。18年アジアパラはシングルス銀、ダブルス金。06年からリクルートオフィスサポート勤務。舞美夫人(旧姓上木原、35)は女子クラスで活躍した元選手。175センチ、71キロ。
<車いすテニスめも>
▼東京出場枠 下肢障がい男子56人、同女子32人、四肢のうち3肢以上に障がいのある男女混合のクアード16人。1カ国・地域からの最多出場枠は男女シングルス各4人、同ダブルス各2組、クアードはシングルス3人、ダブルス1組
▼代表決定 18年アジアパラの男女シングルスを制した国枝慎吾、上地結衣の出場は決定
▼ランキング枠 来年6月7日時点の世界ランキングで男子40位以内、女子22位以内、クアード12位以内
▼その他の条件 推薦枠やダブルスランキング上位で出場の可能性がある。また、国別対抗戦の代表入りなどの規定もある