パラ走り幅跳び山本篤「自分も何か応援することができないか」胸に無料ロゴ

山本の右胸には「新日本住設」と「Habilisjapan」のロゴが入る(撮影・上田悠太)

ユニホームに記されたスポンサーロゴは、何も選手を支えている企業が、その“見返り”として、名前を出してもらっているものとは限らない。

東京パラリンピック男子走り幅跳び(義足・機能障がいT63)代表である山本篤(39)のユニホームの右胸には所属先である「新日本住設」はもちろん、その下に「Habilis japan」とプリントされている。

25日、高松市内で行われた東京パラリンピックの代表最終選考会を兼ねるジャパンパラ陸上最終日。山本が、そこにある特別な思いを、6メートル30(追い風2・5メートルの参考記録)で優勝した後に明かした。

「応援されるだけでなく、自分も競技をすることで、何かを応援することができないかなと考えた。サブスポンサーであれば、大きな金銭をいただいた証しとしてつけるのが普通だと思うのですけど、僕の中では違うと思った」。

ハビリスジャパン(Habilis japan)は、手足に障がいのある子に対する支援事業を行っている一般社団法人だ。社会参加、リハビリ、義肢の貸し出しなどのサポートをしている。

その活動理念に共感し、また知ってもらいたいとの意味も込め、自らハビリスジャパンへ出向き、ロゴを入れていいかと“逆営業”をした。破格の安さの条件とかではない。その契約に金銭は発生していない。無料だ。選手として、その活動を応援したい。ただ、その気持ちで動いた。

過去に銀メダルを2個獲得した第一人者で、18年平昌の冬季パラリンピックにも出場するなど知名度はパラ陸上界での知名度は抜群。ならば、オファーを受けた中から条件のいい企業を選ぶのが一般的だ。ただ、「どこのパートナーシップを結ぶのが、モチベーションになるのか」を考えると、その最優先事項は条件でなかった。

ハビリスジャパンとは以前から、イベントで関わりがあった。

「障がいがあっても子どもたちがイキイキと運動を楽しむプログラムがあった。共感しましたし、もっともっと広げていきたい。そして、そういう子にも将来、明るい未来があるよと見せたい。僕を見たことによって、頑張れる気にちょっとでもなってもらえたら、すごくうれしい」

勝負だけでない。そこに新たな価値を見いだすべく、競技に向き合っている。【上田悠太】