村岡桃佳「お金のかかる娘でごめんね」金1号の軌跡

大回転で金メダルを獲得し、観客席に手を振る村岡(AP)

 大回転女子座位で村岡桃佳(21=早大)が、日本選手団第1号の金メダルを獲得した。今大会4個目のメダルで、アルペン勢としては06年トリノ大会3個の大日方邦子を超えた。18日の回転にも出場し、全5種目でのメダルを目指す。

 21歳の女王が誕生した。村岡は1本目で首位に立ち、最終滑走者の2本目。1段ギアを上げて全長約380メートル、30本以上の旗門を果敢に右へ左へ攻めた。2位に2秒以上の差を広げ、電光掲示板の「1」を見ると観客席に大きく手を振った。日本選手団史上最年少の金メダル。号泣する立位の本堂杏実が近寄ると感極まり「本当に取ったんだ…。金を取るのは今日しかないと思っていた。うれしさや達成感が入り交じった何とも言えない感じ」と目を潤ませた。

 この日に勝負を懸けた。開会式で旗手を務め、連戦が続く中、午前4時に起床して試合に備えた。「勝つか、転ぶかの滑りをする」。あがり性が“勝負師”となった。地元の埼玉県深谷市の福祉基金で購入したチェアと師匠で滑降男子座位銀の森井大輝のおさがりスキー板で臨んだ。「アドレナリンが出ても冷静に」。全てをエネルギーに変えた。

 小4の時、文集に夢は「パラリンピックに出ること」と記した。中2で競技を始め、用具代や遠征費など費用がかさんだ。父秀樹さん(48)に何度も「お金のかかる娘でごめんね」と言った。勉強と読書が好きで文武両道を貫き、早大の「トップアスリート入試」で第1号のパラアスリートになった。

 メダル10個を持つレジェンド大日方氏を超える1大会4個の偉業を達成。村岡は言う。「偉大な先輩を超えられて光栄。限界は超えてないし、さらに上を目指します」。夢はかない、金メダルのご褒美まで手にした女王は、回転で5個目のメダルを狙う。【峯岸佑樹】

 ◆パラリンピックの同一大会複数メダル 夏季では04年アテネ大会の競泳女子で成田真由美が8個(金7、銅1)のメダルを量産した。成田は00年シドニー大会でも7個(金6、銀1)、96年アトランタ大会で5個(金2、銀2、銅1)を獲得した。河合純一も92年バルセロナ(銀2、銅3)、シドニー(金2、銀3)、アテネ(金1、銀3、銅1)の3大会で各5個のメダルを獲得している。なお、1大会4個のメダル獲得者は98年長野冬季大会でアイススレッジスケートの土田和歌子(金2、銀2)ら多数いる。