【パリ26日=日刊スポーツ取材班】パリオリンピック(五輪)の開会式(午後7時30分=日本時間27日午前2時30分)を控える当地で、式典当日を狙ったとみられる鉄道設備への放火が相次いだ。フランス国鉄(SNCF)が発表。高速鉄道のTGVをはじめ、多くの列車が運休するなど混乱が続いている。
25日にナントで行われたサッカー女子の1次リーグ第1戦、日本(なでしこジャパン)-スペイン戦を撮影した本紙カメラマンは、一夜明け、まさにTGVでパリへ戻る最中に騒動の影響を直で受けた。
南西部のボルドー、北部リールとパリを結ぶ玄関口の駅を取材した記者、競泳会場で選手反応を取った担当ら、日刊スポーツのパリ五輪取材班が当地からリポートする。
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なでしこジャパンのスペイン戦から一夜明け、ナントからパリのモンパルナス駅へ向かうTGVに乗車した。出発が1時間半ほど遅れた後、ゆっくりと列車は動きだした。途中、ルマン駅で停車。終点のモンパルナス駅が機能していないとの理由で長時間、足止めを食った。
運転再開の見通しが立たない中、乗客はフランス国鉄(SNCF)から、飲み物やクッキー、ドライフルーツなどがセットになった非常食の配布を受けることができた。定刻通りなら2時間4分の旅程だったが、ルマン駅に4時間ほど停車し、計5時間半ほど遅れたものの、無事パリに到着した。【垰建太】
なでしこジャパンは、移動方法の変更を余儀なくされた。ワールドカップ(W杯)女王スペインに1-2で逆転負けした後、ナントで調整し、TGVでパリの選手村へ入る予定だった。
しかし事件を受け、急きょ大会組織委員会が手配したバスで移動することに。警察によるエスコートを受けながら、所要5~6時間が見込まれる旅程が組まれた。チームは28日、パリで行われる第2戦でブラジルと対戦する。
男子の1次リーグ第1、2戦が行われるボルドーのサン・ジャン駅でも混乱があった。パリ・モンパルナス駅まで約2時間のTGVが完全にストップ。駅のスタッフは「今は何も状況が分からない。案内板を見るしかありません」と説明。人がごった返したホームなどで乗客への対応に追われていた。
大きな荷物を持った人々から質問攻めにあっていた五輪スタッフも「パリに行くのは何時になるのか分からない。非常に難しい状態」と明かした。当地では、翌27日にマリとの第2戦を迎え、勝てば準々決勝進出が決まる。【佐藤成】
競泳日本代表の多くは、午前9時台に本番会場のラデファレンス・アリーナで調整していた。TGVの破壊行為に関しては、日本オリンピック委員会(JOC)が日本選手団に対して注意喚起。選手は、取材エリアで状況を知ることになった。
男子200メートルバタフライで金メダルの期待が懸かる本多灯(22=イトマン東進)は「犯罪者の気持ちは分からないけれど(警備に)隙はないだろうなと勝手に思っています」とし、大会の運営に信頼を寄せた。
女子平泳ぎで競泳日本勢史上最年長33歳の鈴木聡美(ミキハウス)は「ちょっと応援に来る家族が心配」としつつ「心配だけれど、なるべく心配しないように自分のコンディションに集中したい」。周囲の騒がしさをよそに、選手は27日に初日を迎える大舞台へと集中していく。【松本航】
朝、翌日に控えるバスケットボールの試合に向け、リール行きのチケットを手配していたところ、TGVの一報が入った。パリ北駅に向かうと、足止めされて待機する大勢の人々と、目を光らせている大勢のパリ警察。しばらく続きそうな物々しさを考えて、試合当日の移動はバスで模索中だ。【河田真司】
パリ南西部、大西洋路線の玄関口に当たるモンパルナス駅では、地面に座り込む人が続出した。スタッフによれば、復旧のめどは午後の時点で立っておらず、早くても完全再開は週明け29日からとなる見通し。乗客からの対応に追われていた。
パリ東駅でも混乱の声が上がった。86歳男性は知人の到着を待っていたというが、破壊事故により、会うことがかなわず。「政府は問題ないと言っていたが、このありさまだ」と困惑した表情を浮かべた。一方で五輪を楽しみにする声も。20代男性は25日にサッカー男子1次リーグのマリ-イスラエル戦を観戦したといい「五輪はとても楽しみだよ。ボクシングも注目している」と話していた。【藤塚大輔】
リールや、その先の隣国ベルギーなど北部路線の玄関口となるパリ北駅では、遅延や運休が重ねて案内された。多くの乗客が足止めを食い、座り込むなど疲れた様子で、駅構内やホームの手前まで人であふれた。警官や銃を抱えた警備隊も多数、警戒を強めている。
ベルギーの首都と結ぶブリュッセル中央駅との発着が止まった8番線では、ベルギー選手団のスタッフ5人ほどが、本来の到着時間がまとめられた紙のリストを手に電話を繰り返し、駅員にも説明を求めていた。
状況を尋ねると「開会式に出席される幹部や来賓が到着する予定だったのに、入れていないの。ブリュッセルの駅で運行再開を待っている状態。おそらく夜の式には間に合うと思うけれど…」と困惑していた。
この路線はバスケットボール男女の会場、ピエール・モロワ競技場があるフランス北部の都市リールも通る。翌27日に競技開始を控える中、復旧のめどは立っておらず、観客などの移動に影響が出ることは避けられそうにない。【木下淳】
事件は前日25日夜から26日未明にかけ、TGVの仏大西洋岸(ボルドー方面)東部(ストラスブール方面)北部(リール方面)路線の少なくとも3地点で起きた。同時多発のため妨害行為とみられる、運行施設の火災が発生。徐々に復旧のめどは立っており、仏当局も「開会式への影響はない」と声明を出しているが、首都中心部セーヌ川で行われる式典への影響が懸念されている。