【柔道】阿部一二三、五輪で味わった最高に「うれしい気持ち」と「悔しい気持ち」が成長の糧に

3日、銀メダルを胸に記念撮影する阿部一二三(左)と阿部詩(撮影・パオロ ヌッチ)

<パリオリンピック(五輪):柔道>◇3日(日本時間4日)◇混合団体戦◇決勝◇シャンドマルス・アリーナ

【パリ3日(日本時間4日)=木下淳】最終日に混合団体戦が行われ、日本は東京五輪と同じ顔合わせとなった決勝でフランスに3-4と再び惜敗。2大会連続の銀メダルに終わった。

男子で66キロ級で2連覇の阿部一二三(26=パーク24)が1階級上との8分52秒の死闘の末、敗戦。3-1から2連敗で迎えた代表戦で男子100キロ超級5位の斉藤立(22=JESグループ)が、ルーレット抽選で決まった同階級金メダルの怪物テディ・リネール(35)に屈した。借りは28年ロサンゼルス大会で。女子52キロ級でV2を逃した阿部詩(24=パーク24)は初めて兄とロスを狙うと宣言した。

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激闘の混合団体から一夜明け、一二三は会見後「筋肉痛で動かん~」と座り込んだ。1階級上で銀メダルだったガバとの死闘。日本が誇るエースは、力を出し尽くした。「66」の2連覇王者は決勝で起用され、勝てば日本の金メダルが決まる5番手として3-1の状況で登場した。個人戦で「一二三」コールも浴びたスターも、この日は完全アウェー。ブーイング、国歌合唱、指笛を一身に浴びた。

個人戦は19年から、海外勢には18年から無敗の絶対覇者が、目を見開き、鬼気迫る形相で果敢に攻めた。先に指導2を引き出し、普通の国際大会なら反則勝ちできるほど攻め立てたが、申告が金銀を左右する3つ目の指導を引き出せない。かつて丸山城志郎と24分間の死闘を演じた男も、階級が上の外国人には消耗させられた。最後はレスリングのタックルのような、すくい投げで一本を奪われた。

後続も2連敗で頂点を逃し、珍しく、むせび泣く。「未熟だった」。3年前の屈辱。日本武道館での借りが膨らんだ。試合後の通路でも涙が止まらない。妹の詩が敗退した直後に初戦を迎えた個人戦では、妹の無念を背負い、圧倒的な強さを示した。団体では銀。妹は初戦のスペイン戦で復帰し、自身は2戦目セルビア戦から登場したが、最後に力尽きた。「妹にも同じ色のメダルをあげたかったけど」。兄も限界があった。

それでも表彰式を終えると、いつもの顔だった。「五輪で最高にうれしい気持ちと、最高に悔しい気持ちを味わったのは、たぶん自分だけ。この経験で、もっと成長できる」。4年後のロスで73キロ級へ上げる可能性もある逸材。3連覇の偉業か、日本初の2階級制覇か。日本の顔として走る。