<男子日本代表広報リポート 第10回>
バレーボール男子日本代表の岸翔太郎広報がお届けする「男子日本代表広報リポート」の第10回。男子代表は、27日に幕を開けるパリ五輪へ向けてポーランドで最後の合宿を行いました。五輪直前の今回は、合宿での選手たちの様子と、チームに帯同してきた1年2カ月間で感じた思いをお届けします。
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7月14日、チームはパリ五輪直前合宿のポーランドへ出発。エルブロンクとグダニスクの2都市を回りました。ポーランドは昼間でも気温が30度に届かない非常に過ごしやすい気候。エルブロンクでは現地のファンの方へ向けた公開練習を、グダニスクでは世界ランキング1位の同国と強化試合を行いました。
この試合は、パリ五輪前最後の対外試合となりました。関田誠大選手、西田有志選手、石川祐希選手、高橋藍選手、山内晶大選手、高橋健太郎選手、山本智大選手がスタメン出場し、セットカウント3-2(23-25、25-20、25-19、23-25、17-15)で勝利しました。
選手達にこの試合の収穫を聞くと、関田選手「五輪直前の試合で貴重な機会だったし良い結果でよかった。自分としては攻撃の部分でミドルブロッカーを使い続けられたことが良い点でした。五輪に向けて非常にワクワクしている。メダルを取れるように初戦に向けて準備したい」。西田選手「ここまできたら技術的な部分より気持ち的な部分が大切なのでそこを見せられてよかった。ブロックは貢献できたが、もっとサーブで崩せると思うのでそこを詰めていきたい」。石川選手「五輪前に良い強化試合でした。いつも以上にサーブレシーブで良いパスを返せていたと思う。スパイクミスは少なかったが点を取れるところで決めきれなかったのが課題。初戦のドイツ戦が五輪の中で1番大切になるのでしっかりと準備して臨みたいと思います」と、五輪へ向け手応えを話してくれました。
気づけば、パリ五輪を迎えました。私がこのチームに帯同したのは1年前の5月。23年は富山、愛知、フランス、フィリピン、ポーランド、トルコ、イラン、沖縄、東京、24年は沖縄、東京、オランダ、ブラジル、福岡、フィリピン、ポーランドと8カ国12都市に同行させてもらいました。
この2シーズンについて、少し振り返らせてもらいます。正直なところ、当初私自身はバレーボールについてあまり知りませんでした。代表選手は石川祐希選手しかわからないほど。そして、スポーツとしても、ボールを落とさないようにプレーするという単純な競技だと思っていました。
ところが、チームに同行し、日々練習を撮影していると、膨大なデータに基づく緻密な戦略があるデータスポーツだということを思い知らされました。データを集計し分析するアナリスト、それを統率し選手達にわかりやすく伝える監督やコーチ、常にフィジカルを作り、ケアも行うドクター、トレーナー陣。食事から選手をサポートする栄養士。そして全ての情報を把握し、チームをまとめるマネジャーと、さまざまな役職の方がそれぞれの役割をこなし、1つの目標に向かっています。
当たり前と言えば当たり前の話ではあるのですが、その当たり前を継続することこそ非常に難しいのです。そしてその当たり前のクオリティーを上げられたことが、スタッフ陣の努力のたまものだと思います。選手がストレスをためず、100%以上のパフォーマンスを出すためにサポートする姿にはいつも感服させられました。各方面から「男子バレーは史上最強」「メダル獲得有望」などと言われていますが、選手達はもちろん、陰ながら支えるスタッフの活躍があったからこそ、今のバレーボール男子日本代表があるんだと痛感しました。
そして、選手達も私が帯同し始めた23年5月より、今は自信に満ちた顔をしていると感じます。昨季は、ネーションズリーグ(VNL)で銅メダルに輝き、アジア選手権では優勝。五輪予選では自力で出場権を獲得。今年はVNLで銀メダルと、1つひとつ階段を上がり、歴史を塗り替えてきました。
2シーズンを通し、特に変化を感じたのは甲斐優斗選手と大塚達宣選手です。
昨年の甲斐選手は、私がカメラを向けると、目のやり場に困り言葉を詰まらせるなど、インタビュー一つ取ってもたどたどしい感じがありました。もちろん、大学生だから無理もありません。プレーもどこか先輩達に気を使っている部分があったと思います。しかし、今はどうでしょう。セッターに対して「もう少し高くください」とトスのリクエストをするなど、自己表現をする機会が増えました。そしてカメラを向けると、ハキハキと自分の気持ちを伝えてくれたり、先日の五輪壮行会では自己紹介で「甲斐くんです」とボケを披露し笑いを取ったりすることもあります。何より昨年は「五輪という舞台はイメージが湧かない」と言っていていましたが、「五輪予選を経験し、海外挑戦をしてパリ五輪が目標として明確になった」と、選手として意識が変化しているなと感じました。
次に大塚達宣選手。ベンチスタートの多い大塚選手のハイライトは、今年のVNLだと思います。先日、イタリアリーグへの挑戦を発表した彼ですが、VNL予選ラウンド(R)フィリピン大会やファイナルRでは高橋藍選手がけがで離脱してしまったこともあり、スタメン出場が増加。大車輪の活躍で、銀メダル獲得へ大きく貢献しました。昨年の大塚選手は後衛での途中出場が多く「チームからは安定した守備を求められていた」と言うように、いわゆる守備の人というイメージでした。しかし、自身が「自分のターニングポイントはVNL福岡大会のポーランド戦です」と話すように、この試合では途中出場ながらチーム最多タイの10得点。守備はもちろんのこと攻撃にも力が入ったと振り返っていて、殻を破り、存在価値を証明したと思います。その後、フィリピン大会やファイナルRでは「自分のプレーはもちろん、プラスしてしっかりと雰囲気をつくる」と、コート上で一番声をあげていました。大塚選手の変化、成長により、チームの層がより一層厚くなった気がします。
ここでは2人の選手の名前を出しましたが、全選手が日々レベルアップしているのを実感しています。本当に、このチームは金メダルを取るのではないか、何かやってくれるのではないかと日々感じます。こんな個性豊かなすてきなチームに携われたこと、そしてバレーボールを知らなかった私に競技の楽しさ、奥深さを教えてくれた選手、スタッフに感謝し、五輪前2シーズンの総括とさせていただきます。
パリでは全ての選手、スタッフが報われる結果を心から祈ります!
Creating History Together! ガンバレ!ニッポン!
◆岸翔太郎(きし・しょうたろう) 1990年(平2)5月19日、埼玉県志木市生まれ。小学校からバスケットボールを始め、中学時には全国大会優勝。高校、大学と強豪校でバスケを続け、その後テレビの企画制作会社へ。現在は、昨年に続き、日本バレーボール協会広報部撮影班として男子日本代表チームに帯同し、チームの日々の練習や宿舎での様子などを撮影。