夏季33回目のスポーツの祭典が幕を開けた。200以上の国・地域や難民選手団を合わせ、約1万1000人の選手が参加するパリ五輪が26日に開幕した。8月11日まで32競技329種目で熱い戦いが繰り広げられる中、72年ミュンヘン大会以来52年ぶりの金メダル獲得の期待がかかるバレーボール男子日本代表。キャプテンの石川祐希(28)が、夏の祭典への特別な思いを明かした。花の都で「最強日本」を証明する旅へ-。27日、初戦ドイツ戦に挑む。【取材・構成=勝部晃多】
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「どれだけ人気があろうと、アスリートである以上、結果を求め続けなくてはならない」
石川は、そう言い切った。今年のネーションズリーグでは主要国際大会47年ぶりの銅メダルを獲得した昨年を上回る過去最高の銀。世界ランキング2位で大舞台を迎える。人気、期待も急上昇し、国内のパリ五輪注目競技アンケートでは男子バレーが軒並み上位にランクイン。絶対エースもムードの高まりを「もちろん感じる」と実感を込めるが、冷静な目線は失わない。
「やっぱり結果が出てるからだと思う。ただ面白いバレーをするだけだったら、ここまで人気は出ない」
いくら注目度が高まろうと、求めるのは結果。五輪も、決してぶれることはない。
信念の土台には、“悔しさ”がある。8年前の中大3年時。「見る側からやる側に変わったと思ったのは、あの頃」と、思いを強くした。主軸として挑んだリオデジャネイロ五輪予選で涙の敗退。出場権を逃した。本番の決勝戦は現地のスタンドから観戦。国の威信を懸けた戦いの熱狂を肌で感じ、夏の祭典の大きさをかみしめた。続く自国開催で初出場した東京大会は、29年ぶりの決勝トーナメント進出も、準々決勝でブラジルに敗れた。タオルで顔を覆い、ゴールはまだ遠くにあることを痛感した。
そして、熾烈(しれつ)な予選を勝ち抜いて挑むパリ五輪。「8年間の1つの集大成」と位置付ける。東京大会でともに戦った関田、西田、高橋藍、大塚、山内、小野寺、山本の7人に、深津、高橋健、宮浦、甲斐の4人が加わった。
「もちろん僕だけではなく、他の選手も東京の時とは違った思いで臨めると思う。懸ける思いは(東京の時よりも)強い」
五輪でしか果たせない、五輪の雪辱-。静かに闘志を燃やす。
幼い頃からこの舞台を夢見てきたアスリートも多い中、「家で、テレビがついていたら見るくらいかな…。思い出に残っているシーンも特に浮かばないし、ちっちゃい頃とかあまり興味がなかったですね」と幼少期を振り返る。当時、男子バレーは長い低迷期にあった。
だが、今は違う。人気と成績が伴った優勝候補。主将としてその中心にいる石川は、五輪の結果が日本バレーボールの未来への道しるべになると信じている。
「結果を出すことによって、子供たちも『かっこいいな』って思ってくれる可能性は高い。未来の子供たちにとっても、非常に夢があるスポーツだということを証明したい」
その重責を全うする覚悟があるからこそ、パリで目指す場所はただ1つ。
「このチームでどれだけいい成績を残せるか。このチームで金メダルを取れるかが全てだと思う」
結果=金メダル。72年ミュンヘン大会以来となる52年ぶりの頂へ-。花の都で、その場所に立つ。
◆石川祐希(いしかわ・ゆうき)1995年(平7)12月11日、愛知・岡崎市生まれ。小4で競技を始め、愛知・星城高では2年連続3冠(インターハイ&国体&全日本高校選手権=春高)達成。14年に中大に進学し、在学中からイタリアリーグ・セリエAでプレー。同年に初めて代表入りし、21年から主将を務める。ミラノに所属した昨季はチーム、自身ともに過去最高の3位。パリ五輪後は名門ペルージャでのプレーを発表。192センチ、84キロのアウトサイドヒッター。
○…男子代表は27日、石川が「五輪の中で一番大切になる」と位置付ける初戦ドイツ戦に臨む。チームはポーランドでの合宿を経て23日にパリ入り。午前9時開始の同戦に備え、午前8時から約2時間体を動かすなどして調整を続けてきた。ドイツの世界ランキングは出場12チーム中下から2番目の11位だが、今年のVNL予選ラウンドではフルセットまで持ち込まれた難敵。VNLでは温存されたエースのグロゼルの出場も見込まれ、石川は「サーブでどれだけ攻められるか」とカギを挙げた。