66年ぶりの2連覇を狙う羽生結弦(23=ANA)が完璧な演技で首位発進を決めた。

 冒頭の4回転サルコーからフィニッシュまで、流れある滑りで会場を沸かせた。得点は111・68点で、自身が昨年9月のオータム・クラシックで記録した112・72点の世界歴代最高点に迫った。

 「特に不満な点もなく、自分自身も疑問に思うエレメンツもなにもなくできたので非常にうれしく思っていますし、そうですね、滑走順だとか、また自分のサポートメンバーだとか、また応援してくださっている日本の方々含めて、世界中の方々、本当に自分は恵まれているなと思いながら今日滑ることできたので、また明日に向けてやりたいと思います」

 汗を流しながら、感謝の言葉を口にした。

 演技前の構成予定表では最初は4回転ループと表記されていたが、サルコーを跳んだ。「ここ(韓国)にくる前にサルコーでずっと練習していたので、まあ、ちょっと、いろいろ調整が間に合わなかった部分があったのかなと思います」と明かした。

 その後はショパンのバラード第1番のピアノの調べに乗り、2本目のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)では満点の3点の加点を引き出すと、旋律の力強さが増す後半へ。4回転トーループと3回転トーループの連続ジャンプも2・57点の加点を得て、万雷の拍手とともにフィニッシュポーズを決めた。

 昨年11月にNHK杯の公式練習で右足首を痛めてから3カ月、最後の試合となったロシア杯から4カ月。ぶっつけ本番での五輪となったが、準備は万全だった。11日に現地入りし、12日は軽めに練習。13日からはSP当日のスケジュールに合わせ午前5時前に起床。3食の食事も数時間早めて摂取した。ちょうど1年前に同会場で行われた17年4大陸選手権の映像や記憶をたどり、イメージトレーニングもばっちり。けが明けとは思えないほど体が動き、練習の合間にひなたぼっこするほど気持ちに余裕があった。

 前日の調整では、4回転を10本中8本成功するなど、絶好調だった。この日のSPに向けて「大好きな1番滑走を楽しみたい。このプログラムも3年目ですし、全然違う内容だけれでも、大好きな曲で滑ることができるので、その楽しさ、または自分が勝ちたいという気持ちも含めて、全部出したい」と高揚する気持ちを素直に語った。

 グループの1番滑走は、世界で初めて100点超えを達成した14年ソチ五輪SPと同じ。さらに当時の世界最高点を更新した15年グランプリ(GP)ファイナルも最終組1番滑走だった。「大好き」と語る曲は、3シーズン目の使用となるショパンの「バラード第1番」。「そのときその時の自分を表現できる」というプログラムに、今、ここで滑れる喜びをのせた。

 向かうのは明日17日のフリー。意気込みを問われると、「自分にとってはフリーのミスがここまで4年間強くなった1つの原因なので、また明日に向けてリベンジしたいなという気持ちが強いです」と決意を語った。4年前のソチ五輪フリーでは金メダルを獲得したが、フリーではジャンプなどミスが目立ち、悔しさもあった。その気持ちをこの日までの苦難を越える原動力にしてきた。

 「とにかくやるべきことはやってきましたし、2カ月間滑れなかった間もとにかく努力をし続けました。その努力をしっかり結果に残したい」。

 いよいよ2連覇が見えてきた。【高場泉穂】