内村航平(27=コナミスポーツ)が高レベルな演技構成を誇る6種目で「最も難しい」と語っていたのが跳馬だ。

 「リ・シャオペン」は、種目別のスペシャリストでも挑戦が困難な、Dスコア(演技価値点)「6・2」の大技。昨年から実戦で使えるようになった切り札が大舞台でも鮮やかに決まり、15・566点とハイスコアをたたき出した。

 6種目を通じたDスコア合計は内村が「39・4」で、ベルニャエフは「40・1」。種目ごとではともに「6・9」の床運動を除き、内村がベルニャエフを上回ったのは得意の鉄棒とこの跳馬だ。

 「リ・シャオペン」は側転からひねって後ろ向きに踏み切り、台に手を突く前に、さらに空中でも体を半分ひねる。そこから伸身で前方宙返りしながら2回半ひねりをして、最後は後ろ向きに着地する。跳馬の元世界選手権王者の李小鵬(中国)が編み出した技に「(映像で)何百万回も見てきた」と憧れてきた。

 ただ、習得は容易ではなかった。「着地で立てなかったら、けがにつながるので恐怖心もあった」と振り返る。リオ五輪前、李氏に内村の映像を見せて助言を求めようと、日本チームの関係者が接触を試みたほどだ。

 助走前に左右の腕を伸ばし、交差させるルーティンは有名だ。踏み切りのロイター板手前のマットにつく手をイメージし、助走路の延長線上に線を引くという。「着手までの動きがうまくいけば、あとは流れで成功する」と自信を持って臨んだ跳躍だった。