陸上の日本選手権女子1万メートルで30分20秒44の日本新記録で優勝し、東京オリンピック(五輪)代表に内定した新谷仁美(32=積水化学)がレースから一夜明けた5日、大阪市内で会見した。

従来の日本新を28秒45も塗り替えたが、「過去の自分を超えられていない」。13年世界選手権5位。その最初の引退前に、世界大会で残した最高成績を上回る強い決意を示した。

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日本人はアフリカ勢にはかなわない-。そんなトラック界をつつむ空気感をぶっ壊していく。新谷は強い言葉を並べた。

「アフリカ勢の強さがすごく際立っている。日本人は無理だろうと思われがち。私はどうしても、『ぎゃふん』と言わせたい。日本人でもやれるということを証明したい」

タイムは今季世界2位、条件は大きく異なるが、昨秋の世界選手権(ドーハ)でも銀メダルに相当する。決して夢物語ではない。14年に1度引退する前年の世界選手権では5位に入った。しかも9500メートル付近まで先頭で引っ張った。4年間の一般企業のOL生活を経た18年の復帰時は、昔の自分超えを、目標としていた。

「超えられたか、超えられていないかで言えば、結果で過去の自分を超えてないのが現状です。過去一番の成績は(13年の)世界選手権モスクワ大会1万メートル5位。それ以上の結果を出さなければ、超えたことにならない。昨日はあくまでタイムのみ」 18年ぶりに日本新を約28秒、7年ぶりに自己ベストを約36秒も塗り替えても、満足できない。そもそも世界記録とは1分以上の差がある。確かに、11位だった昨秋の世界選手権後は「日本の恥。メダルを取らないと恥」と言っていた。席巻するアフリカ勢を倒さなければならない。

課題は「メンタルの弱さ」と自覚する。結果への執着心から、レース前の緊張感、恐怖から涙することもある。「32歳になったので泣かないようにスタートラインに立てたら」。5000メートルとの2種目での五輪代表も狙う。過去に日本勢女子トラック種目の五輪メダルは28年アムステルダム大会800メートル銀の人見絹枝だけ。5000メートルは96年アトランタ大会の志水見千子の4位、1万メートルは同大会の千葉真子の5位が最高だ。7年前の5位を超えてくれば、悲願のメダルも視野に入る。【上田悠太】