寺本明日香「さらに人生語る演技を」ケガから復活へ

オンライン取材に応じた寺本

体操女子で2大会連続オリンピック(五輪)出場の寺本明日香(24=ミキハウス)が15日、オンラインで取材に応じた。

2月の代表合宿初日の床運動の練習中に左アキレス腱(けん)を断裂。全治6カ月と診断されながらも、東京五輪出場を目指し現役続行する覚悟を固めた。その後、3月に1年の延期が決まっていた。日本女子体操界の第一人者が、現在の心境などを語った。

<やらない後悔より、やる後悔>

-現在の状態は?

体調は元気です。少しずつできることが増えてきて、少し体がしんどい時期ですが、耐えてやっています。運動制限がないくらいできているので。でも、何カ月もやってなかったから最初にリハビリをやり、しっかりアキレス腱(けん)を動かしてから、トランポリンとかやり、できそうな技をかけていくという感じですね。

-ケガした時の心境は?

もう終わったと思いました。ケガした瞬間に、東京五輪はもう無理だと思いました。すごく覚えていて、頭が痛くなったというか。アキレス自体は痛くないんですが、なんかやばいんだろうなと体で感じて。したら切れていて、イコール終わりだという感じで。泣けもしなかった。あきらめないと自分がおかしくなりそうだった。切った瞬間に一番に思ったのは「これから何をしよう」ということでした。

-手術後に続行を決めたが、周りの声はあったか?

手術は次の日。(代表)合宿が終わり、最初に村上茉愛がきてくれて色紙をくれた。「絶対乗り越えられるからね」「待ってるからね」と書かれていて。感動しすぎて心が痛くなりました。

-辞めようと思ったところからの心境の変化は?

最初に電話をかけたのはトレーナーの先生と、あともう1人、自分のレジックでやっている大学の後輩。その人に「自分はいま体操を続けようか迷っている」という相談をした。その時に「もし辞めたら、東京五輪までの5カ月間、地獄だよ」と言われて、あと「明日香なら絶対に後悔する」と言われたのと。現役を続けたとして、もし五輪に出られなくても、やった感はあるというか。「やらなかった後悔の方が明日香には地獄だよ」と。ごもっともと思って。私の本当の気持ちはそうなんだと思ったんですね。やらない後悔より、やった方がいいと。

最終的に手術が終わり、落ち着いた時に、岡崎先生に。先生は全然あきらめてなくて、逆算してこの時期にこれができて、平均台のこの技はできれば種目別はいけるとか、まだチャンスはある、と言ってくれて。その言葉でばっと決められた。辞めるという方向に傾いていたのを、トレーナーの先生、大学の後輩が気持ちを傾けてくれて、先生がこの道しかないと声をかけてくれた。

<さらに「語る演技」を>

-その後に延期が決まった。

やっぱり、残念になる選手もいるのでなんとも言えませんが、自分はアキレス切って無理してやろうとしていた時期。無理しなくていいんだと。無理するとまた切れやすいらしく。再断裂が怖かったので、ちょっと遅れてしっかり治せるなと思いました。

-ケガで得たことは?

メンタル面ですかね。結構、私が体操しているなかで、一番しんどい、乗りこえなきゃいけない壁、試練だったので。これを乗り越えれば、心の底から人間的に強くなるなと思います。

-「人生を語る演技がしたい」と今季は臨んでいたが?

この1年いろんなことがあった。私だけではなく、いろんな方が苦しんだりしているかもしれないけど、そういう中での東京五輪は違った感動もあると思う。私は人生を語る演技がしたいという目標で1年やってきましたが、さらに語るものが出せると思う。それを目標に演技をしたい。

-試合の日程などは?

9月に全日本シニアがあります。無理する大会ではないけど、いまの出力を試したい。跳馬以外の3種目は出たい。12月の全日本は選考がかかってくると思うし、そこでどれだけ完成しているかのアピールも必要だから、12月には戻せるようにしたい。

-五輪の魅力は何か?

全競技の団結力ですかね。世界選手権は体操だけ。五輪は他競技もいるので、そういう力がパワーになります。ロンドンの時は初めてすぎて、リオの時は新体操とか一緒だったし、日にちはずれてたけど。あとは団結式があり、そこでいろんな競技の方としゃべったり見たりするのが刺激的でしたね。

-五輪がないかもしれない不安はあるか?

もし、開かれなくても、自分が見せることはある、できることはある。コロナの中で試行錯誤してやっている競技団体もあるだろうし、そういうのをまねて体操もやらないとなと。五輪が全てではないと思います。