体操男子団体決勝、栄光への架け橋かけるのは…冨田洋之氏に教え子特徴聞く

体操男子日本代表。左から橋本大輝、谷川航、北園丈琉、萱和磨(2021年7月21日撮影)

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「栄光の架け橋」をかけるのは誰だ!? 26日は体操男子の団体総合決勝が行われる。16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)から2連覇に挑む日本代表は、4人全員が初出場で「新生・体操ニッポン」として頂点に挑む。予選首位通過で最終種目は鉄棒に決まった。思い出すのは04年アテネ五輪。「栄光への架け橋だ」の実況とともに着地を決めた冨田洋之さん(40=順大准教授)に、主軸の教え子たちの特徴を聞き、得点の算出方法、種目の順番、演技順などを解説する。【取材・構成=阿部健吾】

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五輪の名場面で必ず挙げられる、17年前のアテネ。ゆずが歌う「栄光の架橋」のフレーズを、NHKの刈屋富士雄アナが、鉄棒の着地の演技に重ねた名シーン。日本の最終演技者、放物線を描いていたのが冨田洋之さんだ。「アテネの時は誰もやりたがらなかったんです」とほほ笑み、懐かしむ。そのアテネ五輪を見て、五輪に憧れた選手たちがいまの主力。特に順大の教え子、萱、谷川、現役生の橋本はかかわりが深い。

直前合宿では、誰が最終演技者になるか。あのシーンの再現を狙うかで、皆が手を挙げアピールしていたと聞くと「それはうれしいですね。初出場がみんななので、変な怖さはない。それを生かして勢いで乗り越えてほしい」と目を細めた。実際、そのシチュエーションをつかんだ。

24日の予選。首位通過を決めて「正ローテーション」を得た。「正」とは床運動→あん馬→つり輪→跳馬→平行棒→鉄棒。体操の基本の試技順で、皆が慣れ親しんでいる。この「正」を手にできるのは予選上位2カ国だった。若さと勢いままに躍動し、見事に1位通過。前回のリオは4位で届かなかった「金への近道」を手にした。

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主軸を担うのは冨田さんが指導する順大の現役とOB。萱と谷川は卒業後も同大を拠点にしており、各自の特徴にも明るい。

<橋本>「穴がない。若干つり輪が苦手ですけど、体が全体的に若いので、決して力が弱いわけではないですし、脚力も強い。ここ1、2年で平行棒も克服して、非常にオールラウンダー。伸び率が高い選手です。練習では盛り上げ役。それにつられて、自分も盛り上がっていく」

<萱>「彼の一番の武器になるのは安定性ですね。練習量がそれを生みます。普通の選手であれば、何となくやってみようという1本でも、彼は1本への思い入れが強い、人一倍強い。どこを注意するか、いかに失敗を出さないかを常に頭にいれて毎回練習している」

<谷川>「脚力がある選手で着地に強い選手。跳馬が武器です。普通の選手ならバランスを崩して、後ろによろけるくらいの姿勢でも彼はバランスを崩さないで止めることができる。止まる着地姿勢の幅が広い」

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決勝は前回の五輪から大きくルールが変わる。リオでは各種目、5人のうち3人が演技し、その合計点で争った。今回は、各種目を4人のうち3人で演技する。より穴が少ないオールラウンダーをそろえる必要があった。18年ユース五輪5冠の18歳の北園も含め、上位3カ国で最も弱点が少ないのは日本だ。また、予選の得点は決勝に持ち越さない。

再びの栄光の架け橋は誰がかけるのか。現時点での有力候補は新エースの橋本だが、冨田さんは言う。「もう、憧れでもないと思うので(笑い)、日本代表としての自覚を持ち、自分がその場でやりたい演技は何かを考えて演技してほしいですね」。

○26日の体操男子団体総合決勝の演技順が発表され、予選1位で2連覇を目指す日本は橋本大輝(順大)が平行棒を除く5種目、北園丈琉(徳洲会)がつり輪を除く5種目を演技することになった。萱和磨は床運動と跳馬、谷川航(以上セントラルスポーツ)はあん馬と鉄棒を除いた4種目に出場する。

◆体操団体 予選の結果によって上位から2カ国ずつが同じローテーションとなる。予選1、2位は決勝を床運動から始め、最終種目は鉄棒。同3、4位はあん馬から始まり床運動が最終。5、6位は跳馬でスタートしてあん馬が最終となる。午後7時に競技開始で午後10時すぎにはメダルが確定する見込み。

◆冨田洋之(とみた・ひろゆき)1980年(昭55)11月21日、大阪市生まれ。8歳から体操を始める。01年全日本選手権で初優勝すると、07年まで6度の優勝を誇った。04年アテネ五輪団体金メダル、平行棒銀メダル。05年世界選手権では日本選手3人目の個人総合優勝。