柔道男子60キロ級で3度の世界王者を誇る高藤直寿(26=パーク24)が2大会連続の五輪代表を決めた。27日に日本連盟の強化委員会が開かれ、東京五輪代表に内定した。

リオデジャネイロ五輪は銅メダル。「五輪の悔しさは五輪でしか返せない」と引き締まった表情を見せた。

ライバルで後輩の永山竜樹(23)が台頭し、追われた4年間だった。「豪快に負けた相手。それも2回も。完璧に負ける相手に出会ったことはなかった」。弱くなっていくのではという不安にさいなまれ、悩む日々も送った。「東京で金を取って」。妻、2人の子供たちからの期待の声が支えだった。

4年間で手にしたのは堅実さだった。天才肌。リオ五輪の前は「高藤スペシャル」など常人では発想できない大技など、そのセンス抜群で駆け上がった。多彩な技で1本を取りにいくのが持ち味だった。永山の登場に敗北も味わい、かじを切ったのは堅実路線。「まずは取りこぼしをしない」。基本の両手で相手の道着を取りにいくことにこだわった時期もあった。失点を減らし、安定感を求めた。それで17、18年と世界選手権を制した。そして、いまはリオまでのスタイルと、堅実なスタイルとが「ミックスしている」。進化形の柔道で2度目の舞台に立つ。

気取らない直球の発言が魅力。この日はリオ五輪時の経験を生かして、東京ではやらないことを問われ、「試合前日に金メダル取った時のインタビューのことを考えるのはやめます」と苦笑した。ブラジルでは試合当日に選手村の部屋のベランダで独り言をつぶやき続けるなど、精神面で過度な重圧に押しつぶされそうになった。「インタビューで何言おうとしていたか、飛んでしまったくらい、緊張していた」と試合日に難があった。この4年間、成長したのは技術だけではない。いまは4年前の自分を懐かしめる。その心持ちが精神面で手にしたものだ。