東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの来夏への延期に伴い、会場再確保の調整が課題となっている東京ビッグサイト(江東区)について、展示会産業の国内最大業界団体、日本展示会協会が8日までに危機感と懸念を表明した。

同協会事務局の発表によると、東京ビッグサイトが東京五輪・パラリンピックのメーンプレスセンター(MPC)や国際放送センター(IBC)として使用されることで、計20カ月におよぶ利用規制が発生。「展示会が十分に開催できず、2019年と2020年の2年間で計8万3600社(影響を受ける支援企業、出展者の合計)が約2兆5000億円に上る売り上げを失った」と説明した。

そこに延期が重なり、利用制限が「もう1年」という可能性が出ている。予定通り今後の展示会が開催できない場合について「さらに(5万160社で)約1兆5000円の損失が生まれ、3年間の合計で13万3760社による約4兆円の売り上げが失われる。日本経済に壊滅的なダメージとなり、多数の中小企業が倒産の危機に陥ることが危惧されている」と切実に訴えた。

また、東京都、都議、自由民主党の展示会産業議員連盟と経済産業省に要望書を提出。3月31日付で「(最大面積を誇る)東館を含めた東京ビッグサイトを予定通り利用できるよう」求めた。

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け「日本の展示会業界は大きな痛手を被っております。出展社・団体はもちろんのこと、主催企業・展示会業界を支える支援企業にも大きな売り上げ損失をもたらすことになりました」と現状を伝えつつ「加えて、東京五輪開催1年延期に伴い、東京ビッグサイトの東・東新展示棟や西・南展示棟が、2020年12月以降においてもIBC、MPCとして据え置かれ、当初予定されていた展示会が開催できなくなった場合、主催会社・支援会社・出展社はさらに大きな売り上げ損失をもたらすことは間違いなく、日本の展示会業界は再生不可能な痛手を負うことになります」と主張した。

東京ビッグサイトは、首都屈指の大型展示場で国際会議、モーターショーなど幅広く使われてきた。それが五輪・パラリンピックの準備と撤去作業を含め、最長で昨年4月から今年11月まで「貸し切り」となっていた。本来であれば、今年12月7日開幕の日本国際工作機械見本市を皮切りに通常使用が再開されるはずだった。2021年も国際的イベントの予約が入っていた。

この意思表明による業界側の希望は「全館使用可能になること」だが、大会組織委員会も丁寧に説明し、交渉し、理解を得ていく努力を重ねる構えだ。同協会はそれによって通常使用が不可能となった場合の代替策も提示した。

<1>首都圏に仮設展示場を建設する

<2>幕張メッセ、東京ビッグサイト西・南棟は展示場として使用可能にする

<3>青海展示棟の使用期間をオリンピック後まで延長する

<4>首都圏の他の展示会場も含めた調整

<5>五輪後の撤去期間の短縮について再検討

<6>既に募集を開始している展示会への支援

組織委は、これらの課題とも向き合う難儀な交渉を進めていくことになる。かねて難関と言われてきた東京ビッグサイトの再確保問題。国内最大の展示業界団体が「再生不可能な痛手を負う」との強い言葉で懸念を示したことで、延期で発生する巨額の補償料だけでなく、借り上げによる「展示場不足」の指摘に対する丁寧な対応も求められる。

◆日本展示会協会 イベントや展示会の主催者や支援企業などでつくる一般社団法人。1967年(昭42)に発足し、14年に一般社団法人となる。会員数は300を超える。会長はマイナビ専務の浜田憲尚氏