五輪の開閉会式演出チーム再編、野村萬斎氏ら離れる

野村萬斎氏(右)と佐々木宏氏

新型コロナウイルスの影響で来夏に延期された東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの開閉会式演出チームが再編されることが22日、複数の大会関係者への取材で分かった。狂言師の野村萬斎氏(54)率いる7人の現チームは解散し、現在パラリンピックの演出統括だったクリエーテイブディレクターの佐々木宏氏(66)が新たな総合統括となる。野村氏は大会組織委員会のアドバイザーに新しく就任する。組織委は23日、会見して発表する。

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東京2020大会が今年開かれていた場合と、ウィズコロナの社会で行われる大会とでは大きく意味合いが変わるため、開閉会式の計画もガラリと変更する必要がある。そのため五輪パラの開閉会式演出家チームを再編することが判明した。

総合統括の野村氏、五輪統括の映画監督・山崎貴氏、パラ統括の佐々木氏をはじめ、振付家・MIKIKO氏、歌手・椎名林檎氏、映画プロデューサー川村元気氏、パラ・クリエーティブプロデューサー栗栖良依氏からなる現チームは解散。新たに佐々木氏をトップとした新チームを結成する。

佐々木氏は16年リオデジャネイロ五輪の閉会式で行われた東京への引き継ぎ式で、安倍晋三前首相による「安倍マリオ」を企画した人物の1人。白血病から復帰した競泳の池江璃花子を抜てきし、今年7月23日に国立競技場で行った1年前イベントの演出も手がけた。

関係者によると、今年計画していた開閉会式の演出計画はコロナ後に実施する式典に見合わないと判断。一方で7人のクリエーターで新たな計画を練り直すと、アイデアがまとまりにくくなることを懸念した。

五輪の開会式まで残り7カ月。推進力を上げて企画立案するために、リオの引き継ぎ式や池江の1年前イベントを成功させた手腕を評価し、佐々木氏をトップに据え置くことでまとまった。アドバイザーに就任する野村氏を除き、ほか5人のメンバーが何らかの形で式典に関わるかは未定。

東京五輪は近代五輪124年の歴史で初めて延期された。組織委などは、その歴史的な大会で人類がコロナに打ち勝った証しを開会式で表現したい考えだ。

<東京2020大会の開閉会式演出チームを巡る経過>

▼16年1月 16年リオ五輪引き継ぎ式の検討メンバーに佐々木氏、MIKIKO氏、椎名林檎らが選出される。

▼17年12月 五輪パラの開閉会式4式典総合プランニングチームが野村氏や佐々木氏ら8人で発足。

▼18年7月 同チームのメンバーがそのまま8人で開閉会式の演出家チームに移行し、具体的な演出計画の制作に入る。

▼20年1月 同チームの1人がパワハラ問題で辞任し、メンバーが7人に。

▼同7月 延期した大会の1年前イベントを佐々木氏が演出。

▼同12月 同チームを解散。佐々木氏をトップとする新演出チーム結成を発表。

◆佐々木宏(ささき・ひろし)1954年(昭29)10月18日、熊本県八代市生まれ。慶大卒業後、77年に電通入社。26年間在籍し、クリエーティブ局長を経て、03年に独立。JR東海「そうだ 京都、行こう」、富士フイルム「お正月を写そう」などの長寿CMを制作。他にもソフトバンク「犬のお父さん」、サントリー「BOSS」の「宇宙人ジョーンズ」などを手がけた。