ROC「ロシア・オリンピック委員会」組織的ドーピングいまだ不信感

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「ROC」って何? ロシアの選手たちは東京オリンピック(五輪)に「ロシア・オリンピック委員会(ROC)」として参加している。組織的ドーピング問題の処分で主要な国際大会にロシアとして選手団派遣を認められなかったためだ。潔白を証明した選手のみが個人資格で五輪に出場。国旗と国歌の使用を禁止されるなど、さまざまな制限がありながら、すでに日本を上回る50個のメダルを獲得し、スポーツ大国の存在感を示している。

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呼び名が変わっても、競技に打ち込む姿勢は変わらない。今大会には総勢336人がエントリー。7月25日に女子エアピストルでバツァラシュキナが金メダル第1号をもたらしたのを皮切りに、ROCは12個の金メダルを積み重ねた。同26日には体操の男子団体総合決勝で日本と激闘を繰り広げ、勝利。女子でも団体総合を制しており、「体操王国」の復活も印象づけた。

ROCのポズドニャコフ会長は今大会について「金20個以上を狙える」と自信を示している。世界反ドーピング機関(WADA)からの処分後、国旗と国歌の使用が禁止され、表彰式で流れるのは同国の作曲家チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」になった。一方で今大会の使用旗は白地にROCのエンブレムが描かれ、白青赤の色使いはロシア国旗と同じに。ユニホームも白青赤の色使いとなっており、WADAのバンカ委員長は「中立的な色を求めていた。失望した」と語るなど、参加姿勢への不満の声も聞こえてくる。

テコンドー男子80キロ超級で優勝したROCのラリンは「国歌が流れ、国旗が掲揚される中で歌いたかった」と表彰式を振り返った。ROCとして出場できるのは潔白を証明できた選手のみ。しかし、他国選手からはROCの参加に否定的な声も出ており、取り巻く環境は依然として厳しい。

今後も2日から始まったアーティスティックスイミングなど、ROCのメダル獲得が有力視される競技は続く。一連のドーピング問題は、ロシアが旧ソ連時代から五輪を「国威発揚」の場ととらえてきたことが要因のひとつとする指摘もあり、国際的な信頼を取り戻すにはまだ時間が必要なようだ。

○…競泳でROCの参加に疑問を呈する一幕があった。男子のライアン・マーフィー(米国)が30日の200メートル背泳ぎで銀メダルだったレース後、ロシアを念頭に「クリーンでないかもしれないレースに挑むことは、精神的にひどく消耗することだ」と発言した。金メダルはROCのエフゲニー・リロフだった。マーフィーはリロフをたたえた一方で「水泳界にはドーピングがあると信じている」と状況改善を訴えた。世界記録を持つ100メートル背泳ぎでも、今大会は優勝したリロフとROC選手に続く3位だった。

<ロシアの組織的ドーピング問題>

◆14年12月 同年のソチ五輪などでロシアの組織的ドーピング違反が発覚。

◆15年 WADAがロシア選手団を主要国際大会から3年間排除する処分を決定。

◆16年7月 スポーツ仲裁裁判所(CAS)は、国際陸連がロシア陸上チームの同年リオ五輪出場を禁じた処分を支持する裁定を発表。同国陸上選手の五輪出場が不可能に。

◆17年12月 IOCがロシアオリンピック委員会を資格停止とし、18年2月の平昌五輪における同国選手団除外を決定。

◆18年2月 平昌五輪開幕。ロシア選手は潔白を証明した者のみ「ロシアからの五輪選手(OAR)」として個人資格で出場が認められ、168選手が参加。フィギュアスケート女子のザギトワらが金メダルを獲得。一方で2人のOAR選手のドーピング違反が確定したことなどから、ROCの資格停止処分は継続。

◆同9月 WADAがロシア選手団へ下した主要国際大会からの排除処分を解除。

◆19年12月 WADAはロシアがドーピング不正の潔白を証明するデータの改ざんを行っていたとして、同国選手団を20年東京五輪など主要国際大会から4年間排除すると発表。

◆20年12月 CASがロシアの国際大会からの4年間の排除処分を2年間に軽減する裁定。

◆21年2月 IOCが東京五輪と22年北京五輪でロシアに適用する処分について、潔白を証明できた選手のみ「ROC」として出場することを認めた。

▼ROCの今後の主な注目競技 3日にはメダル獲得を狙う世界ランキング3位の男子バレーボールが準々決勝カナダ戦に臨むほか、レスリング女子62キロ級では世界選手権2位のオフチャロワが川井友香子と対戦する。2日から始まったアーティスティックスイミングではデュエット、チームの両種目6連覇がかかっており、6日から始まる新体操では世界選手権の個人総合3連覇中のジーナと双子の姉アリーナのアベリナ姉妹が登場予定。

▼IOCコード 国際オリンピック委員会(IOC)が独自に定めるアルファベット3文字の国名コード。五輪に参加する全ての国とグループに割り当てられる。アルファベット3文字を用いたコードは、他にも国際サッカー連盟が定めるFIFAコード、国際標準化機構のISOコードなどがある。それぞれで表記が異なる国もあるが、日本は全てJPN。