「復興五輪」かけ声も…原発事故の記憶/アテネルポ

アテネ市の若者が集まる「渋谷」とも呼べる場所も衣料店は開いているものの人はほとんどいなかった(撮影・三須一紀)

【アテネ17日=三須一紀】東京オリンピック(五輪)の聖火引き継ぎ式が19日、第1回近代五輪(1896年)が開かれたパナシナイコ競技場で行われる。新型コロナウイルスの世界的感染拡大により無観客、報道陣も少数という厳戒態勢で実施する。迎え入れるアテネ市内も、政府からの要請で飲食店は軒並み閉店するなど、都市機能がまひ。世界遺産パルテノン神殿を望む観光地では閑古鳥が鳴き、とても五輪の足音を祝う雰囲気ではなかった。

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「新型コロナよりも、放射能が心配だ」。アテネを取材していると、そう答える30代男性がいた。東京五輪に行って見てみたいかと尋ねた時だった。

旧ソ連のチェルノブイリ原発事故を引き合いに出し、「簡単に除染できるはずがない。東京の放射能の影響はどうなのか」などと逆質問してきた。震災から9年が経過しても東京電力福島第1原発事故の衝撃は消えていなかった。

既に原発から10キロほど離れた自治体では帰町がなされ、住民が戻ってきていると説明すると、目を見開いて驚いた。さらに記者から「この聖火リレー、国内では福島から始まる。しかも原発から20キロにある場所から」と説明を受けると、「本当か」と今まで以上にびっくりしていた。外国人にとっては「東京は福島と近いから、やっぱり心配だ」という意見は、率直なものなのだろう。

「復興五輪」の名のもとに、聖火リレーの初日は原発事故の影響が最も大きかった福島・双葉郡を中心に回る。その理由の1つに「復興した姿を世界に発信する」とあるが、まだ戻れる見通しが立たない帰還困難区域があることなど、もう1つの現実も伝えなければならない。